2011年2月5日(土)「しんぶん赤旗」
主張
八百長発覚
相撲協会にもう「徳俵」はない
暴力事件や野球賭博事件など不祥事が相次ぎ、初場所で「新生」を誓ったばかりの日本相撲協会が、八百長の発覚という大相撲の根幹にかかわる問題で、存亡を問われる事態を迎えています。相撲協会にもはや、土俵で力士を助ける「徳俵」はありません。疑惑の全容を徹底調査するとともに、不祥事や八百長を根本的になくす組織改革しか、存続の道はありません。
メールに動かぬ証拠残る
今回の八百長の発覚は、力士などがかかわった野球賭博事件の捜査で警察が押収した携帯電話から、八百長を話し合ったとみられるメールが見つかったことによるものです。いわば動かぬ証拠です。
メールで確認された力士は13人にのぼります。「きょうはコケ(負け)だよ」「後20(万円?)で利権を譲ります」など中身は具体的です。13人以外にも関与を疑われる力士がいます。相撲協会の聞き取りでは現在は親方に就任している元力士を含め、少なくとも3人が関与を認めました。取組の検証で、メールで話し合ったとおりの展開が確認されるものも見つかりました。八百長がおこなわれていたことはもはや否定できません。
横綱・白鵬の連勝記録や下位の力士が横綱や三役を倒す“快挙”が土俵をわかす一方、最初から勝敗が決まっている八百長相撲や無気力相撲が、どれほど大相撲のスポーツとしての魅力を損ない、ファンを失望させることか。ことはどれほど非難しても非難したりないものがあります。八百長発覚を機に、「しょせん大相撲はスポーツではない。興行、見世物だ」との声が聞かれるのは、熱心なファンでなくても悲しい限りです。
しかも、明らかになったメールの中には、取組の結果そのものを賭けの対象にしていたとみられるものもあったと伝えられています。野球賭博同様、賭博は明らかに犯罪であり、犯罪の疑惑は徹底して調査すべきです。
大相撲をめぐってはこれまでも、力士などの証言や週刊誌などメディアの報道で、たびたび八百長の疑惑が取りざたされてきました。相撲協会はそのたびに疑惑を否定し、裁判で争う場合もありました。今回の事態に対しても相撲協会の放駒理事長は「これまでは(八百長は)一切なかった」と全面否定しています。
しかし、“臭いものにはフタ”とばかりに疑惑を押しつぶしてきた態度が結果的に八百長をはびこらせ、大相撲から八百長を一掃するのを遅らせたことはなかったのか。日本相撲協会は特別調査委員会を設置し力士の調査を始めていますが、過去の執行部の責任を含め大相撲全体についてメスを入れることが不可欠です。
再生むりなら自ら辞退を
八百長相撲が、正々堂々と実力をたたかわすべきスポーツの基本に反し、ひいては日本相撲協会の公益法人としての資格にもかかわることは明らかです。3月場所の開催の是非がとりあげられ、福祉大相撲など興行の中止が相次いでいるのも仕方がないことです。
問題は今回の事態を、相撲協会が徹底してウミを出し切り一切の不正を根絶して、スポーツとして恥ずかしくない姿を実現するきっかけにするのかです。それができないのなら、相撲協会はスポーツと名乗り公益法人の恩恵を受けることを、自ら辞退すべきです。