2011年2月4日(金)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
空き地で春を探しました。寒さが続いたせいでしょうか、いち早く春を告げるオオイヌノフグリの花も、まだ咲いていません。しかし、重なり合って地をはう葉っぱの緑あざやかなこと▼きょうは立春です。日脚は伸び、折から寒気もようやく緩んできました。雪深い北国の春は遅いですが、「寒明け」や「春立つ」という言葉が、人々の気持ちを春へといざなってゆきます▼春は、人の営みにとって別れや旅立ちの季節です。オオイヌノフグリをみて「いぬふぐり」の歌を思い出す人もいるでしょう。―くにさんと息をはずませ登った、いぬふぐり咲く丘。「くにさんは戦争に行った」「いぬふぐりを忘れない」(すずきみち子詞)▼「十五の春」「十八の春」は、進学や就職の門出です。知人の娘さんも、ことし公立高校を卒業します。就職するつもりです。しかし、就職先は決まっていません。学校からは、「自分で探してください」といわれています。「みつからなかったら、しばらくアルバイトするしかないか…」と、思い始めている彼女です▼厚生労働省の調べによると、ことし卒業見込みの高校生の就職内定率は、昨年11月末で70・6%。前年の同じころより少し高いものの、3割の人が内定をえていませんでした。春の声をきき、あせりが募ります▼「犬ふぐり大地は春を急ぐなり」(阿部みどり女)。歳時記に載る句です。けれど、「春」という語が、旅立とうとする大勢の若者を追い詰める言葉となる世であってはいけません。