2011年2月3日(木)「しんぶん赤旗」

国防予算は“聖域”

オバマ政権も議会も協調


 オバマ米政権は現在、2012会計年度(11年10月〜12年9月)の予算を策定しています。昨年11月の中間選挙の結果、下院で多数派となった野党・共和党が「歳出削減」を掲げるなかで“協調”を迫られていますが、国防予算の“聖域化”ではすでに足並みをそろえています。(山崎伸治)


 フォードを買う予算しかないのに、息子がフェラーリをねだる―ケンドール国防副次官(調達・技術・兵たん担当)は1月末、国防総省近郊で開かれた会合で、米国の大衆車とイタリアの高級車を引き合いに、米軍の軍備調達には見直しが必要だと強調しました。

変わらぬ世界一

 ゲーツ国防長官は1月6日、調達計画の見直しや兵員削減などを通じて、今後5年間で純額780億ドル(約6兆5000億円)の経費節約を図る方策を発表。見直しの対象としては、海軍の次世代弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBNX)や陸軍の新型戦闘車両などがあがっています。

 オバマ大統領も先の一般教書演説で、わざわざ「国防長官は歳出削減に合意してくれた」と述べて“英断”を称賛しました。しかしこの削減幅では、せいぜいこの先5年程度の国防予算の伸びを抑える程度にすぎず、同予算に大ナタを振るったとは言えません。

 元米陸軍大佐でボストン大学教授のアンドリュー・ベースビッチ氏は政治ブログ「ハッフィントン・ポスト」で、「(国防総省から)いくら取り立てても、せいぜい(予算の)伸び率を抑えるだけだ」と指摘。米国が世界のどの国よりも軍事費を使っている事実に変わりはないと批判しています。

 一方、野党・共和党は中間選挙で、総額1000億ドルの歳出削減を公約に掲げ、新議会でその実施をオバマ政権に迫っています。しかし国防予算は「聖域」です。

 同党の下院院内総務を務めるカンター下院議員は1月23日放送のテレビのインタビュー番組で「あらゆる予算が論議の対象となる」と述べ、国防予算も削減の対象になると強調していました。

国防除くと明記

 ところが同議員も賛成して下院が25日に採択した決議は、歳出を08会計年度(07年10月〜08年9月)程度にまで抑えることを求めたものですが、わざわざ「安全保障(=国防)を除く支出」と明記しています。

 今年1月は、アイゼンハワー大統領が退任演説で「軍産複合体」による国家・社会への影響力行使の危険を指摘して50周年でした。「アイク(アイゼンハワー氏)は正しかった。国防支出は削減せねばならない」―コラムニストのデービッド・イグナティアス氏は1月26日付の米紙ワシントン・ポストで、オバマ政権の国防予算にからめて主張しました。





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