2011年2月3日(木)「しんぶん赤旗」
主張
予算委総括質問
国民の命と安全の重大問題
通常国会での論戦が本格化し、まず衆院予算委員会での基本的質疑(総括質問)が、3日間にわたっておこなわれました。
日本共産党の志位和夫委員長が衆院での代表質問に続いてとりあげたのは、日本航空の人員削減・整理解雇、環太平洋連携協定(TPP)への参加、社会保障と税の「一体改革」の問題です。いずれも空の安全、食の安全、医療問題という、国民の命と安全にかかわる核心問題です。政治の責任を正面からただす質問に、菅首相も日航の人員削減が安全を脅かす恐れや、高すぎる国民健康保険料の「痛み」を否定できませんでした。
「安全の層」が薄くなる
日航問題で志位委員長がとりあげたのは、日本航空の人員削減・整理解雇が、政治が直接責任を持つべき「空の安全」を脅かしていることです。政府としても見過ごしにできない大問題です。
菅首相は代表質問への答弁で、日航再生の大前提は「安全」だと答えました。総括質問で志位委員長は首相にその答弁の確認を求めたうえで、「安全第一」は問題といわんばかりの稲盛和夫会長のもとで日航が進めている人員削減の実態を取り上げて迫りました。
航空機の安全運航にとってベテランの機長や副操縦士、客室乗務員の経験と知識が欠かせないのは世界と日本の航空業界を見ても明らかです。それなのに日航は、機長は55歳、副操縦士は48歳、客室乗務員は53歳で一律に辞めさせるという人員削減を強行しています。まさに安全にとって欠かせない経験を否定するものであり、「安全の層」を薄くしてしまいます。
165人の労働者に対する整理解雇が、過去の病気欠勤や業務離脱を基準にしていることも問題です。乗務員の航空身体検査は自己申告によってなりたっています。これでは体調不良があっても申し出を控えざるをえなくなることも危惧されることになります。世界のパイロット仲間からも不安の声が上がっているのは当然です。
国民の命と安全にかかわる重大問題だと突きつけられて菅首相も「具体的にフォローしていない」といいましたが、経験豊かなベテランがいなくなることなどが安全を脅かす恐れは否定できませんでした。大畠章宏国交相は「日航を呼んで確認したい」と答えました。
政府が空の安全の角度から問題をつかみ検討してこなかったのは大問題です。日航の人員削減を、政府が安全面から総点検することが必要です。日航の無法な人員削減や整理解雇をやめさせるよう政府に引き続き求めるとともに、国会としても稲盛会長を参考人として招致し集中審議をおこなうことが求められます。
TPPでは答弁不能に
菅首相は、例外なしの関税撤廃を原則とするTPP参加が、日本の食料自給率を引き上げる政策とは絶対に両立しないとただしたのには答えられませんでした。TPP参加は中止すべきです。
社会保障を立て直すため、高すぎる国民健康保険料を引き下げるべきだという追及には、保険料が重すぎ、滞納者にたいする取り立てには「胸が痛む」と答えました。それなら保険料を引き下げるため、民主党も公約していたように、国庫負担を増やすべきです。
命と安全にかかわる問題での政治の責任がきびしく問われます。
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