2011年2月1日(火)「しんぶん赤旗」
虚偽記載 関与は明白
小沢氏強制起訴
ロッキード事件で有罪判決を受けた故田中角栄元首相や、故竹下登元首相らのもとで「実力」を蓄え、長年にわたって巨額な政治資金を集めてきた民主党・小沢一郎元代表の刑事責任が追及されることになりました。小沢氏の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる政治資金規正法違反事件(虚偽記載)で、「強制起訴」された小沢氏が問われているものは―。(「政治とカネ」取材班)
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通用しない「秘書任せ」
事件の渦中にある陸山会は、小沢氏自身が代表を務める資金管理団体です。毎年数億円の政治資金を扱う小沢氏の「財布」です。ところが、小沢氏はこれまで収支報告書の記載について、「まったく把握していませんでした」「相談されたり、報告を受けたこともない」「帳簿や報告書を見たこともない」などと関与を否定してきました。常識では考えられないことです。
「陸山会」の事務担当者だった元秘書で衆院議員、石川知裕被告は、東京地検特捜部の調べにたいし、収支報告書の不記載の理由や、不記載について、小沢氏に報告して了承を得た旨を供述しています。
同被告は最近になって、供述内容を否定しています。
しかし、今回の起訴事実によると、小沢氏は石川被告らと「共謀の上」としました。
小沢氏を強制起訴すべきだと議決した東京第5検察審査会の議決書(昨年9月14日)は、石川被告の供述について、「小沢氏を尊敬し、師と仰いでおり、罪に陥れるための虚偽の供述をするとは考えがたい」と指摘。再捜査で供述を維持している点もあげ、「信用性が認められる」としています。
石川被告の元秘書は、小沢事務所での政治資金の取り扱いについて、本紙の取材に、こう証言しました。
「(秘書の)石川氏が独断でやる余地はまったくない。5万円や10万円なら別だが、100万円以上は、小沢氏の許可がいる」
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今回の土地購入は、100万円どころか、4億円です。小沢氏の「秘書に任せていた」という弁明は通用しません。
検察審の議決で注目されるのは、小沢氏がみずからの政治資金をめぐって、2007年2月20日に開いた記者会見に言及していることです。
この会見は、問題の世田谷区深沢の土地を含む陸山会所有とされた多数の不動産が、小沢氏個人の名義だったことが発覚し、「政治資金による資産形成ではないか」という批判のなかで開いたもの。
小沢氏は、その会見で、法人格のない政治団体名義では不動産登記が認められないためだと説明、「私個人は不動産について何の権利も有さない」との確認書(05年1月7日付)を交わしているとしました。
検察審の議決は、この確認書は、小沢氏が07年2月上旬に元秘書の池田光智被告に作成させた「偽装」と指摘。「収支報告書の不記載・虚偽記入への関与を強くうかがわせるもの」と批判しています。
小沢氏の関与は明白です。
核心はゼネコンマネー
くり返した複雑な資金操作
小沢氏を「嫌疑不十分」として、不起訴にした東京地検特捜部の処分に対し、東京第1検察審査会は「不起訴不当」、同第5検察審査会は「起訴相当」という議決を行いました。
いずれも無作為で選ばれた市民11人が審査したもので、「なぜ小沢氏側が複雑な資金操作を繰り返したのか」「なぜ小沢氏の説明は二転三転するのか」という疑問に、共通の答えを出しています。
「4億円の出所について明らかにしようとしないことは、被疑者(小沢氏のこと)に収支報告書の不記載、虚偽記入に係る動機があったことを示している」(第5検審の昨年9月の議決)
「被疑者(小沢氏のこと)が提供している資金について、その原資を隠ぺいするという動機があったことは、石川の供述から明らか」(第1検審の昨年7月の議決)
どちらも、虚偽記載の動機を読み解くカギは、4億円の原資にあるという指摘です。
そこで浮上するのが、中堅ゼネコン「水谷建設」からの1億円の裏献金疑惑です。
この裏献金疑惑について、第1検審は「この資金提供の存否は、一見すると本件の虚偽記載とは直接結びつくものではないが、4億円の原資を隠ぺいする必要性があったことの根拠に十分なりうる」と指摘。水谷建設関係者の供述を「具体的で信ぴょう性はかなり高いものであると言える」としています。
2月7日に石川知裕被告ら元秘書3人の公判が開かれます。この裁判でも水谷建設の裏献金の立証が行われていく予定。虚偽記載の背景を説明するために欠かせないという判断からです。
4億円の原資について小沢氏は「家族名義で積み立てた個人資産」「知人から預かった」などと説明を二転三転させてきました。このこと自体、小沢氏が真実を語っていないことの証明です。
虚偽記載をして原資を隠す―。小沢疑惑の核心は、土地購入の原資が水谷建設を含むゼネコンマネーではないのか、ということです。強制起訴により、この解明は待ったなしとなりました。
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