2011年2月1日(火)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
夜明け前の空に金星がひときわ輝いています。三日月のそばにあるので、細くなった月を照らすかのようです。輝いて見えるのは金星の大気が太陽の光を反射するためです▼星の大気に興味を持った女性天文学者の生涯に関するエッセーを読みました(『UP』1月号)。イギリス生まれのシシーリア(セシリア)・ペイン。『理科年表』に、1925年に星の主成分が水素でできていることを発見したとあります。ただ、この結論が認められるまで長い歳月がかかっています▼エッセーにはその歩みを興味深く書いています。組曲「惑星」を作曲したホルストが教師をする女子学校で、彼から指揮法を学びますが、科学の道を選択します。それは当時の女性にとってきわめて困難な道でした▼物理の講義の聴講は規則で最前列に座り笑いものにされ、学位論文を提出しても学位授与を学科主任や学長が拒否。長く正規の教員になれず、大学の正規職員になれたのは、女性を差別する学長が辞めてから数年後です▼今年は、マリー・キュリーが2度目のノーベル賞を受賞して100周年を記念する国際化学年。自然科学に対する女性の貢献を祝う機会でもあります。研究者の中で女性の比率がとくに低いのが日本。シシーリアの体験は過去の話で済まされないでしょう▼シシーリアは、ナチの強制収容所送りの危険にあった人物を救ったりもしています。50歳を前に天文台交響楽団を組織して、指揮棒をふったそうです。人間と音楽への愛も持ち続けた人でした。