2011年1月30日(日)「しんぶん赤旗」
エジプト デモ拡大
大統領が辞任否定 内閣は総辞職
【カイロ=伴安弘】エジプトでは空前の反政府デモを受け、ムバラク大統領は29日未明、全面的な内閣改造の実施を表明し、同日内閣は総辞職しました。しかしこの日も改めて同大統領の退陣を求めるデモが開始され、情勢は一段と緊迫の度を深めています。アラブ地域の大国であり、同地域における米国の最大の“同盟国”でもあるエジプトの政治的混乱は国際政治にも重大な影響を及ぼす恐れがあります。
ムバラク大統領はテレビ演説で、新しい政府が失業・貧困対策や民主主義などの問題で改革を行うと表明し、「改革を後戻りさせない。市民にさらなる自由を保障するため、歩み続ける」と述べ、自らの辞任は否定しました。
28日には、ムバラク政権の退陣を要求するデモ隊と警官隊との衝突が相次ぎ、与党・国民民主党の本部が焼き打ちされる事態に発展しました。
ムバラク氏は軍司令官として、カイロ全市とアレクサンドリア、スエズに午後6時から翌日午前7時までの外出禁止令を発令。翌29日は、これを午後4時から翌朝午前8時までに延長すると発表しました。
28日にエジプト全体で62人が死亡、数百人が負傷したといわれます。
28日に焼き打ちにあった与党・国民民主党の建物は、29日午前も窓から赤い炎を上げて燃え続けています。近くにあるタハリール広場では、軍の戦車の上にも上がったデモ隊数百人が大統領の30年に及ぶ支配に抗議していました。
インターネットや携帯電話は28日から接続できなくなっており、29日もインターネットの遮断は続いています。
エジプト各地での反政府デモは、28日には数万人の規模に達しました。
帰国したばかりのエルバラダイ国際原子力機関(IAEA)前事務局長は、「ムバラク大統領は市民のメッセージを理解しなかった。体制が倒れるまで市民は激しいデモを続けるだろう」と仏テレビの取材に語っています。