2011年1月27日(木)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
世界中の子どもたちが、天を横切る光を探して空を見上げました。1957年秋のことでした▼当時のソ連が打ち上げた人類初の人工衛星「スプートニク」。誰もが、宇宙時代の訪れを予感しました。競争相手のアメリカがうけた衝撃は大きく、「スプートニク危機」との言葉も生まれます▼アメリカは、航空宇宙局(NASA)をつくり、科学技術に予算をつぎこみ、巻き返します。軍のミサイル技術は上がりました。宇宙開発でも69年、初めて人類を月へ送り、「危機」は収まりました▼オバマ大統領が、いまを「スプートニク」のころにたとえました。一般教書の演説です。新しい国際競争の時代。なにより科学技術と教育にてこ入れし、産業の競争力をつけよう、と。確かに、どこかの政権とは違います。事業仕分けで科学技術に冷たくし、科学者に「なにも分かっていない」とあきれられた政権とは▼大統領は、身近な目標も示します。原子力を含めての話ですが、2035年までに電力の8割を「クリーンエネルギー」に。4年後に電気自動車を100万台に…。ただし、過去を振り返ると、「スプートニク危機」を脱してもアメリカは万々歳とはいきませんでした▼軍事費がかさみ、財政と貿易の赤字でドルの信用は落ち、71年の「ニクソン・ショック」に。いまも、同様の危うさは消えていません。企業は、海外での事業を広げています。どうすれば企業が、新しく生み出される技術を国内で生かすか。その道筋もみえていません。