2011年1月24日(月)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
地元の駅前で雑誌『ビッグイシュー』を売っていたSさんの姿が見えなくなりました。体調を崩されたのか。それとも別の事情か。気になります▼この雑誌の販売員は、目下ホームレスの人。価格300円のうち、160円は販売者の収入になります。年明け、「自転車を買った」とニコニコ話され、もう少し事情をうかがいたい、と思っていた矢先だったのですが…▼生活保護法の改定検討のニュースに、Sさんの顔を思い浮かべました。この国が法律をいじろうとするとき、良くなることはまずありません。今度も、失業者の受給増で2009年度に支払われた生活保護費が3兆円を超したことから、受給者を絞り込むのが眼目のようです▼報道によれば、検討される内容は、就労・自立支援の強化、不正受給の防止策など生活保護の「適正化」に向けた対策とのこと。もっともらしく聞こえますが、大学生の就職内定率ですら、7割を切る時代です。簡単に就労できると、本気で思っているのでしょうか▼生活保護の制度改革については昨年、指定都市市長会が意見書を国に提出。柱の一つは、働ける年齢の人には3〜5年の期限を設け、就労支援をしても自立できない場合は、保護打ち切りを検討する―。憲法25条で保障された「生存権」をはく奪する内容です▼『ビッグイシュー』は、ホームレスの自立を応援する民間事業です。市民の善意は、すばらしい。だからといって、国や自治体が「棄民」政策を打ち出していいはずはありません。