2011年1月23日(日)「しんぶん赤旗」
年金支給年齢上げ検討
与謝野経財相が改悪言及
「税と社会保障の一体改革」を担当する与謝野馨経済財政担当相は21日、「『人生90年』を前提として定年延長を考え、同時に年金の支給開始年齢を引き上げることも考えられる」とのべ、現在、原則的に65歳に引き上げられている年金支給開始年齢を、さらに引き上げる可能性に言及しました。首相官邸で開かれた新成長戦略実現会議の席上でのべたものです。
与謝野氏はこの発言の趣旨について22日未明にコメントを発表し、人生90年時代になり定年が延長された場合は、年金支給開始年齢の延長も検討対象になるという「中長期の日本のビジョンとして述べたものだ」と説明。「当面の社会保障・税一体改革において年金支給開始年齢延長を検討する旨を述べたものでは全くない」とあわてて弁明しました。
菅政権は、「税と社会保障の一体改革」と称して、今後の社会保障のあり方を4月までにまとめ、6月までに消費税増税を含む税制について示すとしています。社会保障の安定を口実に消費税増税を迫る構えですが、与謝野氏の発言で、社会保障については将来的に削減の方向であることが早くも表れた格好です。
現在、国民年金の支給開始は65歳。厚生年金は1994年と2000年の改悪で段階的に60歳から65歳に引き上げられている最中です。
解説
年金支給年齢上げ言及
社会保障削減方向は明白
リストラ・非正規に歯止めを
年金の支給開始年齢引き上げの可能性に言及した与謝野馨経済財政担当相の発言は、菅政権がこれから検討するという今後の「社会保障のあるべき方向」が、拡充ではなく削減であることを明白にしました。
年金は、国民の老後の生活を支える命綱であり、社会保障の最大の柱だからです。年金の給付費は約50兆円(2008年度)と社会保障給付費の半分を占め、国の予算でも10・3兆円(11年度予算案)と社会保障関係の3分の1を占めます。
その年金について、「税と社会保障の一体改革」の担当相である与謝野氏が、中長期的に支給開始年齢の引き上げがありうるとしたのです。年金を削減しながら「安心の社会保障」を築くなどということはできません。
年金の支給開始年齢は、自民党政権下でたびたび改悪され、“逃げ水”といわれてきました。国民年金の支給開始は65歳ですが、会社員の加入する厚生年金は1994年の法改悪までは60歳でした。
それが、定額部分(基礎年金)については01年から13年にかけて段階的に65歳に引き上げられ、00年の法改悪でさらに報酬比例部分が13年から25年にかけて段階的に65歳に引き上げられます。
高齢者の就職は厳しく、いまでさえ、定年になった後、65歳まで「どうやって暮らしていくのか」は切実です。これをさらに引き上げれば、国民の不安はいっそう高まり、内需の低迷に拍車をかけ日本経済の停滞を長引かせる悪循環です。
年金財政が悪化した最大の理由は、大企業のリストラ、正社員の非正規への置き換え、中小企業たたきにより社会保険の支え手である正規雇用の労働者が減り、保険料収入が激減したことです。とくに20代の青年層が非正規化により大幅に減っています。
政府がすべきことは、こうした状況に歯止めをかけるために、大企業に社会的責任を果たさせ、雇用は正社員が当たり前という社会的ルールを作ることです。軍事費などの削減と大企業や高額所得者に応分の負担を求めて年金財源を確保することこそ必要です。 (西沢亨子)
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