2011年1月23日(日)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 山口彊さんの「彊(つとむ)」には、少し説明がいるでしょう。1916年、長崎生まれ。お父さんは、中国の古典に字を求めて名づけました▼「天地の運行が健やかであるように、君子もみずから彊(つと)めてやまず」という意味の言葉からです。山口さんは、幼心に刻んだ、といいます。「太陽の運行のような、自律した人間になるよう努める」と▼しかし、山口さんはのちに、地上に太陽が落ちてきたような光景をみます。1945年8月6日。造船所の仕事で出張していた広島の勤務を終え、明日は長崎に帰るという日でした。突然、白い光に満ち、中空に膨張する大火球▼山口さんは、意識を失い大やけどを負っていました。やがて黒い雨。「大広島(だいひろしま)炎(も)え轟(とどろ)きし朝明けて川流れ来る人間(にんげん)筏(いかだ)」。戦後詠んだ歌です。長崎にたどりついた日の翌9日、またもやピカッと閃光(せんこう)。原爆が追いかけてきた…▼「地上に太陽が出現してはならないし、雨が黒くあってはならない」(回想録『ヒロシマ・ナガサキ二重被爆』)。06年、記録映画「二重被爆」が国連で上映され、出演した山口さんも国連職員に核廃絶を訴えました。当時、90歳。ことし、続編が上映されます。「彊」の名に導かれるかのように、93歳までつよく生き抜いた山口さんでした▼昨年12月、山口さんがイギリスBBCのお笑いクイズ番組で、「世界一運の悪い男」と笑いものになりました。「原爆」を知らない、海の向こうの人々。キャメロン英首相もオバマ米大統領も、みんな広島・長崎へ来い! 





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