2011年1月16日(日)「しんぶん赤旗」
チュニジア
政権内部の汚職に不満
チュニジアで23年にわたり続いてきたベンアリ政権崩壊の背景には、食料価格高騰と高失業率に加え、政権内部の腐敗と近年の経済停滞、民主主義抑圧に対する中間層からの不満などが指摘されています。
同国の失業率は公式には14%といわれ、中間層出身者がほとんどの大卒者の場合は、この倍となっています。アラブ首長国連邦(UAE)の衛星テレビ・アルアラビーヤのインタビューで、フランスの歴史専門家ベンジャミン・ストラ氏は「政治運営が国民意識の発展に適合せず、政権を支えてきた中間層からの圧力が以前にも増して強くなった」と、ベンアリ政権の崩壊を分析しています。
政権内部の汚職・腐敗について英紙フィナンシャル・タイムズ(12日付)は「ここ数年、国の支配者による汚職・腐敗が、経済成長のブレーキとなり国内の投資を抑制してきた」と報じていました。
英BBC放送は「(ベンアリ政権時に)人権侵害が続き、ジャーナリストや政治的敵対者の失踪、自主的な団体や労組の禁止が行われていた」とのチュニジア人識者の声を伝え、民主主義抑圧への国民の不満も強かったことを指摘しています。
今回の事態は、他のアラブ諸国にも衝撃を与えています。UAE紙ガルフニューズは「チュニジアの暴動は孤立した現象とみてはならない」と述べ、「治安部隊と民衆との衝突は、開発の遅れと高失業率に悩む、どのアラブ諸国にも起こりうることだ」と警戒を呼びかけました。
ベンアリ氏退陣を受け暫定大統領に就任した与党・立憲民主連合のガンヌーン首相の政府は事態収拾に努めていますが、抗議行動が収まる気配はなく予断を許さない状況が続いています。(松本眞志)