2011年1月15日(土)「しんぶん赤旗」

主張

菅内閣改造

政権の延命が、すべてなのか


 昨年6月発足し、9月に改造したばかりの菅直人政権が、再び内閣の改造と民主党役員人事をおこないました。3カ月ごとの改造とは異例です。菅首相は前日の民主党大会で、「日本の危機を乗り越えるため、民主党は何ができるのかを考えた」「最強の布陣」にするといいましたが、閣僚の外交日程を変更させるなど、予定を繰り上げ、急ごしらえでおこなった改造が、追い詰められた結果であるのは明らかです。首相の念頭には、政権の延命しかないのでしょうか。

追い詰められて繰り上げ

 内閣改造の結果、昨年末の臨時国会で参院での問責決議を可決された仙谷由人氏と馬淵澄夫氏、問責決議が出されていた岡崎トミ子氏がいずれも閣僚を辞任しました。検察の捜査をめぐる無責任な発言で昨年11月法相を辞任した柳田稔氏に続いて、9月の改造で誕生した内閣で、国民や野党に批判された4人が辞めたことになります。日本の危機を乗り越えるどころか、国民の願いにこたえられない菅政権自体の危機が深刻です。

 仙谷氏は党役員人事で民主党代表代行に横滑りし、留任した岡田克也幹事長や幹事長代理から官房長官に就任した枝野幸男氏らとともに、形のうえでは“脱小沢”を引き継いだ人事です。しかしそれも近く予想される小沢一郎元代表の強制起訴にそなえ、打撃をかわすねらいからで、菅政権は小沢氏の疑惑の解明と責任追及に責任を果たしていません。国会での証人喚問に背を向け、強制力のない政治倫理審査会出席をめぐる小沢氏との駆け引きに終始していることでも、それは明らかです。

 行き詰まりを深める菅政権が、頼みの綱とする財界とアメリカのために、消費税の増税や環太平洋連携協定(TPP)への参加、日米同盟の「深化」など、どの面でもその要求の「忠実な執行者」としての性格をいっそう強めていることは重大です。自民党政権時代からの消費税増税論者で、民主党の経済政策を批判し、「たちあがれ日本」を離党したばかりの与謝野馨氏を経済財政担当相に起用したのも消費税増税の実現のためです。

 TPP参加を「日米同盟のため」と言い切る前原誠司外相や法人税減税を強行した野田佳彦財務相、米軍普天間基地の「県内移設」を進める北沢防衛相らの留任、TPP参加に“消極的”といわれた大畠章宏氏から参加に積極的な海江田万里氏への経済産業相の交代など、改造政権が財界や米国の要求にいっそう露骨にこたえようとしている証拠は数々あります。枝野官房長官の下に藤井裕久元財務相を副長官にすえた異例の人事も、消費税増税の布陣です。これらが「最強」だというなら、菅政権はいよいよ自民党政権以上に、財界や米国の要求と一体になり実行する政権だということになります。

「異常」抜け出してこそ

 いったい菅首相には、財界や米国の支持を頼りに政権を延命させること以外、深刻な生活不安や米軍基地に苦しむ国民のことはまったく眼中にないのか。

 菅首相が口にする「日本の危機」とは、国民にとってはなにより、政権交代した民主党政権が対米従属・財界本位の政治を続け、政治と社会の行き詰まりが深まっていることです。そうした異常を抜け出さない限り、いよいよ政権そのものの未来がなくなります。





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