2011年1月14日(金)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
「素晴らしい評判を山ほど聞いていたので、私は江戸へ行きたくてうずうずしていた」。トロイア遺跡の発掘で知られるシュリーマンが、旅行記に書いています▼江戸は幕末のころ、ヨーロッパの人々のあこがれの町でした。シュリーマンも、実際に訪れました。彼は、風景の美しさや工芸品の技の高さに感動しています。街の美しさは、欧米人の心をわしづかみにしたようです▼起伏に富む緑ゆたかな街並みだけではありません。イギリスの初代駐日公使オールコックは、アジアやヨーロッパの町と比べ、江戸をほめます。「よく手入れされた街路は…きわめて清潔であって、汚物が積み重ねられて通行をさまたげるということはない」(山口光朔訳『大君の都』)▼終わってしまいましたが、前進座の初春公演では江戸の屑(くず)屋さんが大活躍でした。「江戸の正月―江戸(エコ)な暮らしとお正月」、古典落語が元の「くず〜い屑屋でござい」の2本立て。究極のリサイクル(再生利用)都市、江戸の市民生活を楽しい舞台に仕立てました▼屑屋は、紙ならなんでも回収し、再利用に回しました。便所の落とし紙も、水で洗ってすき直す。馬糞(ふん)拾いがいました。街路で集め、農村の肥料用に人糞より高い値で売る。紙も木も布もとことん再利用し、もう無理というところで燃料に使いました。その灰も肥料に▼オールコックの記すとおり、紙屑も馬糞も落ちていないはずです。江戸の時代に後戻りできませんが、やはり今こそ見習いたい循環型の社会です。