2011年1月14日(金)「しんぶん赤旗」
主張
ゲーツ長官来日
頼みの米国 言い出す前から
来日中のゲーツ米国防長官が菅直人首相、前原誠司外相、北沢俊美防衛相と相次いで会談し、日米軍事同盟の強化に向けた調整を加速することで一致しました。
ゲーツ長官との一連の会談を通じてはっきりしたのは、いまや米国と財界の支持しか頼るもののなくなった菅政権が、米国が求めるものを自分の側からすすんで持ち出しご機嫌をとる、卑屈な態度です。菅政権が、軍事力には軍事力でという「軍事力対応主義」にそって戦争への備えを一段と強める、自民党政権と変わらない危険な政権だということは明らかです。
危険な役割買ってでる
それをもっとも象徴するのは、菅首相がゲーツ長官との会談で、自らの側から「日米同盟をより深化させる方向でやっていきたい」と持ち出し、ゲーツ氏がそれを歓迎して見せたことです。日米同盟が何より大切な菅首相には、軍事同盟がすっかり時代遅れになった世界の流れなど、まったく眼中にありません。
前原外相や北沢防衛相が次々持ち出した、沖縄の米軍普天間基地を県内に「移設」する日米合意の実行や、米軍嘉手納基地での訓練の一部を日本側の負担でグアムに移転してもらうという提案、菅首相の訪米に向け日米の「共通戦略目標を見直す」などの確認は、いずれも米国がわざわざ注文をつけなくても米国の要求を実行するものばかりです。しかも、まさに至れり尽くせりというべきそうした態度をとってもなおゲーツ長官は、訓練移転などの「負担軽減」は普天間基地の「移設」が条件と居丈高に迫りました。菅政権がすっかり足元を見られていることを示しています。
ゲーツ長官が「共通戦略目標のアップデート(更新)と普天間移設は別の問題」としながら、05年の普天間基地の移設のためのロードマップが「非常に重要」だとのべたのは重大です。日米軍事同盟の深化とともに、普天間基地「移設」も追求するということです。
防衛首脳会談では、北朝鮮への対応を理由に、日米韓一体での軍事協力の強化や、武器輸出三原則の見直しまで話し合われるありさまです。米国の要求を先取りする菅政権のもとで、まさに、憲法9条にもとづき日本の戦争参加を阻んできた原則が根こそぎ掘り崩される危険が深刻になっています。
北沢防衛相が会談前日の講演で、「周辺事態法の見直し」を表明したのも見過ごせません。「周辺事態法」とは日本が攻撃されたわけではない戦争を日本が支援するというものです。それを見直すということは、朝鮮半島などで米国が起こす戦争に日本がさらに深く関与することにほかなりません。それこそ日本の平和と安全にはもちろん、北東アジアなど地域の平和にとっても有害無益です。
日米同盟絶対の根を断て
そもそも民主党政権が米国と財界の支持しか当てにできなくなっているのは、自民党政権に終止符を打った国民の願いを裏切り、日米同盟絶対と財界本位の異常を抜け出せていないからです。
普天間基地の閉鎖・撤去を要求し「県内移設」に反対する沖縄県民の総意をゲーツ長官に伝えることさえせず、米国に卑屈な態度をとり続ける菅政権では、沖縄県民をはじめ日本国民の信頼を取り戻すことなどできません。