2011年1月12日(水)「しんぶん赤旗」

生命保険不払い 処分直前に罰則緩和

08年、金融庁が異常な肩入れ


 保険金不払い問題で生命保険各社への処分を目前にした2008年4月、金融庁が行政処分のルールに軽減条項を追加したことが11日、本紙が情報公開請求で入手した金融庁の検討資料などでわかりました。この条項が適用された生保業界は10社が横並びの軽い処分になりました。不払いをめぐっては生保業界の政界工作が問題化していますが、金融庁も生保業界に異常な肩入れをしていた実態が浮かび上がってきました。(生命保険「不正」取材班)


 保険金不払い問題では、08年7月3日に金融庁が生保10社に業務改善命令を出しました。業務停止より軽い処分です。

 本紙が入手したのは、「生命保険会社の支払漏れ等に係る行政上の対応について」と題した金融庁の「決裁参考」とする文書。

 金融庁が業務改善命令の検討材料にしたものです。処分のためにどのような検討をしたかが、書かれています。

 検討文書は、業務停止という厳しい処分ではなく、業務改善にとどめる理由として「各社の自主的な業務改善に向けた取組の状況等を軽減事由として十分に考慮した」としています。

 しかし金融庁は、その前年の07年3月に、損害保険6社を業務停止処分にするなど不払いに“厳罰”で臨んでいました。

 不払い規模の大きさから見ても生保各社への厳しい対応が予想されていました。

 ところが生保への処分が近づいた08年4月18日、金融庁は行政処分の運用を見直しました。運用基準に「自主的な対応を的確に行っている場合は、軽減事由として考慮する」という文言を加えたのです。

 検討文書では、この基準見直しを根拠にして、「更なる業務改善にも着手している」などと、生保業界の対応を評価。

 その結果、生保各社に「業務を停止させることや役職員の責任を明確化することは求めず」という甘い処分に結論づけたのです。

 こうした基準の変更にあたって金融庁は、生命保険協会などの金融関係の業界団体と意見交換会を実施。業界と一体となってルール変更をしたかたちになります。

 本紙の取材に金融庁は「改訂は4月にしているが、複数の業界団体の意見でつくられたもの。生保業界のために変えたものではない」としています。

 この時期の金融担当大臣はみんなの党の渡辺喜美代表(当時自民党、在任07年8月〜08年8月)。副大臣は、自民党の山本明彦元衆院議員。山本氏は生保協会の渡辺光一郎会長(第一生命社長)からたびたび陳情を受けていました。


 業務改善命令 保険業法132条で、内閣総理大臣は契約者の保護を図るために、保険会社に業務改善命令とより重い業務停止命令を命じることができるとしています。また133条では保険業の免許取り消しができるとしています。

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(写真)生保各社への処分を軽減するとした金融庁の「決裁参考」文書

(拡大図はこちら)




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