2011年1月11日(火)「しんぶん赤旗」
米議員銃撃事件
“言論封殺の暴力”に批判の声
銃社会の深刻さ浮き彫り
米民主党のギフォーズ下院議員が頭部を銃撃されて重体、その場に居合わせた6人が死亡―8日、アリゾナ州トゥーソンで起きた事件は全米に衝撃を与えています。犯行の動機は不明ですが、背景には政治対立の過熱があるとの指摘もあります。今回の事件は、銃所持が基本的に自由という米社会が持つ深刻な問題点を改めて浮き彫りにしました。
事件があったトゥーソンは同議員が選出されている米下院アリゾナ第8区の中心都市。同選挙区は、昨年11月の中間選挙で、右派の運動体「茶会」が民主党候補に攻撃を集中した20選挙区の一つ。同議員は、茶会の支援を受けた共和党候補と大接戦を演じ、僅差で勝利しましたが、選挙区内では結果への不満がくすぶっていました。今回の銃撃で起訴された容疑者はインターネットの投稿サイトに「選挙区住民は無知」と書き込んでいたと報じられています。
昨年3月に医療保険改革法が成立した時には、これに賛成したギフォーズ議員に対して、脅迫状が送り付けられるなどの嫌がらせも起きていました。
9日の米テレビ各局の討論番組では暴力拡大についての懸念が表明されました。CBSテレビでシューマー上院議員(民主党)は、「米国にとってもっとも厳粛なる価値の一つは、議論だ。しかしあくまでも、社会的秩序のもとでの議論である」と述べ、言論や政治活動を封殺するような暴力を批判しました。
CNNテレビでアレキサンダー上院議員(共和党)は「移民問題や税金、医療保険改革などむずかしい案件でも他の見解を尊重しなければならない」と語り、今回の事件の背景に加熱しすぎた攻撃があるとの見解を表明しました。
銃社会ともいうべき米国では銃乱射事件はかなりの頻度で起きています。1963年のケネディ大統領暗殺事件や81年のレーガン大統領暗殺未遂事件をはじめ、政治家が命を狙われることも決して珍しくありません。(ワシントン=西村央)