2011年1月10日(月)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
8日付の本紙「読者の広場」に載った、岐阜県の山田一枝さんの投書に胸をつかれた人も多かったでしょう。元日の、にぎやかな夕食時のできごとです▼かすかなチャイム音。出ると、宅配便を届けにきた若い男性が立っている。彼の手の指は血まみれ。深くえぐれた人差し指。山田さんがバンソウコウを巻いてあげると、「助かりました」と若者。彼は寒空の下、年末は夜10時すぎまで、元日も早くて8時ごろまで働きづめ、といいます▼読んだ翌日、ラジオからなつかしい歌が聴こえてきました。嵯峨美子さんと小室等さんが歌う「生きる時代」。“いつか、変わる日がくる。それを信じて”“私たちが生きる時代を、この手につかもう”…▼もとは、エジプト生まれのフランスの歌手、ジョルジュ・ムスタキが1960年代の終わりにつくった歌です。嵯峨さんの訳詩も、学生や労働者の運動が社会の変化を促した、当時の空気を伝えます▼「私たちが生きる時代を…」。「私たち」という言葉が、多くの若者に実感をともなって伝わってくる歌であり、時代でした。同じ時を生きる人々との、とりわけ若者同士の、つながりの実感。山田さんが「気をつけてネ」と見送った若者に、ふだん「私たち」の一語はどう響いているのでしょう▼「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます」趣旨の成人の日。励ますとは少々おこがましいですが、ことし贈る言葉は、「私たちが生きる時代を、この手につかもう」です。