2011年1月7日(金)「しんぶん赤旗」
菅首相を後押し メディアの異常
「菅総理がトップとして、議員定数削減を、いばらの道の中で達成して、消費税(増税)に向かっていく覚悟はあるか」―。菅直人首相が出席した5日夜のテレビ朝日系番組「報道ステーション」では、キャスターの古舘伊知郎氏が、菅首相に向かって消費税増税や国会議員の定数削減をあおる質問を繰り返しました。
ほかにも古舘氏は、環太平洋連携協定(TPP)への参加を表明する菅首相に「痛みを伴う改革をやってでも会社法人化して農業を活性化し、大規模化する覚悟は?」と後押し。これでは、財界やアメリカ政府が喜ぶ消費税増税、TPPを政府と一緒に推進する「広報番組」というほかありません。
こうした姿勢は、一般紙も同様です。4日の菅首相の年頭会見をうけた「読売」5日付社説は「指導力を発揮して有言実行を」として、菅首相が「消費税論議に真正面から向き合う姿勢に再び転じたことは評価できる」と書きました。TPPについては「再び腰砕けとならぬよう、首相は反対派説得の先頭に立つべきだ」と説くありさまです。
「朝日」5日付社説も「本気ならば応援しよう」との見出しで、「TPPと消費税に政策目標を絞り込んだ首相の問題意識を私たちは共有する」とまで書きました。
民主党が「無駄を削れば消費税増税なしで政策実行できる」として政権交代を実現し、昨年の参院選で菅首相の「消費税10%発言」が厳しい批判を浴び、大惨敗したのは記憶に新しいところ。ジャーナリズムならば、民意にそむく消費税増税を批判こそすれ、後押しするなど、もってのほかのはずです。農政でも食料自給率向上の公約とTPP参加の関係を問う姿勢こそが求められます。
「権力の監視役」として求められる役割を投げ捨て、破たんした自公政権と同じ路線をつきすすむ菅政権の応援役を買って出るのは、メディアの退廃にほかなりません。(松)