2011年1月6日(木)「しんぶん赤旗」
主張
消費税増税
土台を壊すやり方ではなく
菅直人首相が4日の年頭記者会見で、消費税を含む「税制改革」について早期に与野党協議を開始し、6月ごろまでに方向性を示したいと明言しました。
首相は「社会保障について、今後の不安が広がっている」とのべています。その上で、財源として消費税を議論しなければならないことは「誰の目にも明らか」で、自公両党も同じ姿勢を示している「今がまさにそのときだ」と語りました。
暮らしと経済に暗雲
「誰の目にも明らか」なのは米軍「思いやり予算」を維持し、法人税率を引き下げる一方で消費税増税を進める民主党政権のやり方が本末転倒だということです。消費税は4年間上げないとした09年衆院選の公約、「思いやり予算」は見直すとした鳩山由紀夫前首相の言明に反した裏切りです。
08年の米大手金融の破たんを契機に広がった世界経済危機で、内需が弱い日本経済の体質の改善が焦眉の課題として浮き彫りになりました。ところが依然として高い失業率が続き、賃金の下落と貧困の拡大に歯止めがかからず、体質は改善どころか悪化しています。家計と内需に大きな打撃を与える消費税の増税は、暮らしと経済に暗雲を広げる最悪の選択です。
首相は「まさにその(消費税増税を議論する)ときだ」と言います。しかし政権発足直後の「新成長戦略」基本方針は、一部企業に富が集中し国民全体の所得が向上しない「構造改革」の転換を掲げて、次のように宣言しました。「国民のための経済の実現に向けて舵(かじ)を切る、100年に1度のチャンスである」
「100年に1度」の歴史的な課題を忘れ去り、法人減税で黒字の大企業にさらに富を集中させ、消費税増税で国民の所得を減らす道へ百八十度の方向転換―。自公政治を変えてほしいという国民の切実な願いを民主党政権が完全に裏切っていることそのものが、国民の閉塞(へいそく)感を深める原因になっています。
社会保障への国民の不安を膨らませた点でも政権には重い責任があります。社会保障削減路線を是正するという公約を破り、医療、介護、年金、障害者福祉、生活保護の各分野で国民に負担増や給付減を迫る政権の姿勢が国民の不安を拡大しています。
軍事費削減と応能負担
日本の財政が火の車であることも、社会保障を削減から拡充に転換するには財源が必要なことも明らかです。それと同時に、財源を生みだす土台である暮らしと経済を立て直さなければ道が開けないこともはっきりしています。
土台である経済を壊す消費税増税は論外です。大企業は消費税をすべて価格に転嫁することで実質的に負担を免れています。財源は消費税しかないという議論は、財界の身勝手な言い分の引き写しでしかありません。財源確保と経済再生の二つを同時に追求するには無駄の削減と応能負担の原則に立ち返る必要があります。
大企業の過剰な内部留保と利益を、雇用と中小企業を守るルールの確立を通じて国民に還元する経済政策へ転換すると同時に、軍事費を思い切って減らし、大企業・大資産家減税をやめて応分の負担を求める財政・税制の抜本改革に踏み出すべきです。