2011年1月6日(木)「しんぶん赤旗」
山陰大雪被害
共産党が実情を聞く
年末から年始にかけて山陰地方を見舞った大雪は、列車の立ち往生、停電、漁船の転覆、農業ハウスの倒壊など大きな被害をもたらしました。被害状況と関係者の要望などを、鳥取、島根の両県記者がリポートします。
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保険でカバーできぬ
漁船転覆 除雪後に降り積もり
鳥取
鳥取県では、境港市で多くの漁船が雪の重みでバランスを崩して転覆、沈没しました。
5日午前9時すぎ、1隻の小型底引き船(5トン)の引き揚げが始まりました。
2時間経過しても、船体が安定しません。
「船体が割れとるんじゃないか。何べん持ち上げても沈む」
漁師仲間が心配げに言いました。
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船主(78)は昨年末の31日夕暮れ、漁師仲間とともに除雪しました。しかし、その後に降り積もった雪のために転覆したものです。
鳥取県によると、県内で転覆、沈没した漁船などは4日時点で264隻にのぼります。
日本共産党県委員会の岩永尚之書記長、錦織陽子県議、松尾好行境港市議は4日、現地を調査しました。5日には、錦織県議と松尾市議が県漁協境港支所(組合員198人)を訪れ、高見信悟支所長と懇談しました。
高見氏は、「こんな短時間に降り積もった雪(72センチ)は初めて」だと言います。「漁船保険ではカバーできない。設備も含めて船体を元にもどすには、9トン船で自己資金が1000万円から2000万円かかる。エンジン、電気系統(レーダー、魚群探知機、GPS、無線など)は高額になる」と高見氏は訴えます。
農業被害も大きく、県によると、大山町や米子市などでビニールハウス70棟以上、牛舎3棟、豚舎1棟、農舎3棟が倒壊。現在、集計中ですが、農業被害は拡大しています。
ビニールハウスでは、バラなどの花きや葉物野菜を栽培しており、1900万円以上の被害が出ています。白ネギやブロッコリーなどの露地物は雪に隠れ、果樹は立ち入り困難なため確認できていません。(鳥取県・岩見幸徳)
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これから収穫だった
イチゴ・花のパイプハウス全半壊
島根
島根県では記録的な大雪の影響で163隻の小型漁船が転覆、沈没したほか、農業施設では約155棟が全半壊など大打撃を受けました。
漁船の転覆などはJFしまね美保関、島根、恵曇支所管内で18隻、中海漁協管内で110隻、八束中海漁協30隻、宍道湖漁協5隻。18隻が転覆した松江市八束町入江の港では4日、重機やクレーン車でつりあげ、刺し網漁の船を起こしていました。
ある漁師は「雪で転覆したのは初めてです。台風ではあるが…」と話していました。
被害への見舞いを述べる日本共産党の尾村利成県議、片寄直行松江市議らに、3隻が転覆した別の漁師は「電装品は替えないとだめです。エンジンの交換で約100万円かかる」と漁業再建にむけた助成を訴えました。
新庄町の港では、漁業者からオーバーホールに多額のお金を要するとの声も聞かれました。
農業施設では安来、松江、出雲、雲南など6市、奥出雲など2町でパイプハウスや農畜産施設等が倒壊・損壊の被害を受けました。
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パイプハウスが多く見られる安来市はイチゴやブドウなどの生産地。原形をとどめないハウスが各所にみられます。JAやすぎによると市内で105棟が倒壊しました。被害はさらに増えそうです。
20歳からイチゴを作る男性(57)=市内東赤江町=のハウスも2棟つぶれました。「これから収穫の時期でした。今年はできもよく期待していたのに…。収入は半分ぐらいになる見通しです」と話し、続けたいが借金をするのは気が重いことを打ち明けます。
トルコキキョウのハウスがつぶれた同下坂田町の農家の男性(59)は「より強いハウスにすると1棟の材料費だけで150万円以上かかる」と、国や県の助成を求めます。
年末から年始にかけてはJRやバス、離島航路など公共交通機関が運休したり大幅に遅れ、松江市では美保関、島根町で7地区が孤立(3日までに解消)しました。また除雪作業中に2人が軽傷、家は一部損壊が6棟、延停電戸数8万8100戸(ほぼ復旧)、停電のための断水1955戸(未復旧2戸)に及びました。 (島根県・桑原保夫)
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