2011年1月5日(水)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
人間というものは、ほんとうに身勝手です。きっと、ウサギさんは迷惑しているでしょう▼ウサギさんには敵が多い。日本にはもういないオオカミはもちろん、タカ、キツネ、イタチ…。子孫を残すのはたいへん。しかし、ウサギは進化しました。発情期をなくし、年中子どもを産めるようにしたのです。なんでも、発情期のない哺乳類はヒトやウサギなどぐらい、という説もあります▼人間は、ウサギさんを多産と豊かな実りの象徴にまつりあげ、あがめました。ところが人間ときたら、一方で、ウサギを娯楽の狩りの獲物にして追い回します。田畑や牧場を荒らすからと、捕まえたり天敵のキツネを放したりします▼まあ、お百姓さんも困りました。獣肉食が禁じられた江戸時代の日本でも、ウサギの肉は許されたらしい。―“獣を殺すな”のおふれが出た。「ウサギもいけませんか」とお百姓。代官が、耳の遠いふりして「ウやサギのたぐいは鳥。殺してけっこう」。で、ウサギを鳥のように1羽、2羽と数えるようになったとさ―▼動物学者、朝日稔さんの創作講談です。日本で、ウサギはウサギでも飼いウサギを、ふやせ産ませと号令のかかった時がありました。先の大戦中です。主に、毛皮をはいで兵士の防寒着をつくるためでした。ずいぶん身勝手です▼けれどウサギさん。人間はウサギがうらやましくもあるのです。たとえば、見事な跳躍力に。うさぎ年にちなみ、私たちもあやかって飛躍したいと思うのは、やっぱり身勝手ですか。