2011年1月4日(火)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
年末年始、茶の間の主役はお笑いとスポーツか。競技だけでなく、バラエティー番組で楽しげな選手に、またちがった一面を垣間見た人もいるでしょう。そのなかで、元日の「イチロー特別対談」には引き込まれました▼大リーグデビューから10年の節目を経たイチロー選手と、コピーライターの糸井重里さんが対談。世界最高峰の舞台で数々の記録を打ち立てるスーパースターとつねに同居する、人間「鈴木一朗」の素顔や悩みが伝わってきます▼84年間破られなかったジョージ・シスラーの年間最多安打をぬりかえた後日談。当時、記録が抜かれれば愛する祖父が忘れ去られてしまうと不安だった孫。しかしその後、シスラーの墓に花を手向け、ひざをついて祈るイチローの姿をみて感謝の念を抱きます▼イチローも「その人が愛され、語り継がれているすばらしい人間であったことが、記録を抜いたことよりも、うれしい」。そして、つながりを感じるというシスラーには「きっちりやります、ぼく」と決意表明したといいます▼そこには、ひとりの人間として、まっとうに生きることもふくまれるでしょう。いまの時代、当たり前のようでも、それを貫くことは難しい。格差社会がもたらす展望なき人生、国民生活に背を向ける政治…▼でも嘆くだけでは変わりません。新年にあたり、みずからの生き方に思いをはせた人も多いはず。イチローにかぎらず、まじめに、まっとうに生きたいという一人ひとりの決意が歴史の歯車を前進させます。