2011年1月3日(月)「しんぶん赤旗」
主張
2011日本経済
暮らしに軸足を置いた政策に
暮らしを犠牲に財界・大企業を応援する「構造改革」は、貧困を広げると同時に内需の基盤を掘り崩して、日本を「成長の止まった国」にしてきました。
「構造改革」の深刻な被害と自公政治への国民の批判を背景にして政権に就いた民主党は、たった1年で自民党流の「財界いいなり」を復活させてしまいました。
迎えた2011年、改めて経済政策の根本転換が切実な課題として浮かび上がっています。
企業の目から見ても
民主党政権が法人課税の5%引き下げを打ち出したことは財界いいなりの典型的な表れです。
国際協力銀行の調査によると、日本企業が事業展開先として有望と考える国のベスト3は中国、インド、ベトナムで、アジアの新興国が並んでいます。有望な理由として、それぞれ「現地マーケットの今後の成長性」を挙げた企業が9割〜6割を占め、いずれの国についてもトップになっています。「優遇税制」を挙げた企業は数%程度にすぎません。
企業の目から見ても大事なのは大企業減税より市場の回復です。大切な財源は暮らしと教育、社会保障に回して、家計を助けて国内市場を土台から温めることを優先すべきです。
数々の税制優遇で大企業の実際の税負担率は欧州より低いぐらいです。この10年、大企業は急激に労働分配率を引き下げると同時に下請け単価を切り下げ、244兆円もの内部留保を抱えています。
むしろ必要なのは大企業の過剰な内部留保と利益を国民の暮らしに還元させることです。非正規から正規への雇用の転換や最低賃金引き上げ、下請け中小企業との公正な取引の保障など、民主的なルールの確立を通じて暮らしを足元から温めることです。
日本企業の競争力の源泉は勤勉な「人材」と豊かな感性を備えた消費者が支える「市場」にあります。「構造改革」は雇用の安定を壊して人材をないがしろにし、消費者の購買力を奪って市場を萎縮させてきました。その転換は、安定した企業経営を目指す立場からも極めて重要です。
予算編成に行き詰まった政権は今年半ばには財界の要求である消費税増税の成案をまとめる方針です。家計に冷水を浴びせ、内需を壊す消費税増税は財政にもマイナスです。消費税増税をやめ、応能負担の原則に基づいて大企業・大資産家が公正に負担する民主的な税制への転換を求める世論を、大きく広げていこうではありませんか。
アジアの中に生きる国として、対米従属を脱してアジアの国々と互いの立場を尊重し合った協力関係を築くことは、日本経済の発展にも不可欠です。
対米従属を抜け出して
菅直人首相が唐突に表明した環太平洋連携協定(TPP)への参加は、財界の要求であると同時に中国に対抗する米国のアジア戦略への追随です。農業と地域経済に壊滅的な打撃を与えるとともに、日本がアジアに軸足を置いて協力関係を深め、ともに発展していく流れに大きな障害を持ち込むTPPへの参加を断念させることは今年の大きな課題です。
財界いいなりと対米従属をやめ、暮らしに軸足を置いた政策に根本から切り替えてこそ、日本経済の明るい道も見えてきます。