2011年1月1日(土)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 坂の町、東京。新宿区の市谷から早稲田へ向かう途中の台町坂を上る。約1キロを上りきるあたりに、作家・坪内逍遥の住んでいた所があります▼いまはマンションが建ち、跡形もありません。1911年9月22日のこと。逍遥宅の敷地にあった演劇研究所の小劇場で、ノルウェーの劇作家イプセンの「人形の家」が、わが国で初めて上演されました▼主人公ノラは、銀行頭取の夫が自分を人格のない人形のようにかわいがっていただけと知り、家を出る。松井須磨子が演じたノラに、天皇制のもとで女性を家にしばりつけようとする人たちはふるえあがります▼“ノラは秩序への大反逆者”と論じる者もいました。対して、ノラに共感を寄せる人もいました。平塚らいてうも、その1人です。彼女は、松井須磨子の演技には不満でしたが。らいてうと仲間は、「人形の家」初演の3週間前の9月1日、女性の文芸雑誌『青鞜(せいとう)』を創刊したばかりでした▼与謝野晶子が「山の動く日来(きた)る」と女性の目覚めをうたい、らいてうが「元始、女性は実に太陽であった」と創刊を宣言した『青鞜』。ノラの言葉、「なによりも第一に、私は一個の人間」と響きあいます▼社会主義者らに対する「大逆事件」の大弾圧のあと、「閉(へい)塞(そく)の時代」に、女性が「自由解放」(『青鞜』創刊の辞)の声をあげました。個人の解放への叫びはやがて、働く女性や参政権を求める女性の運動につながってゆきます。100年前の彼女たちに敬意を表しつつ、新しい年を迎えました。





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