2010年12月31日(金)「しんぶん赤旗」
南米 連携
パレスチナ国家 相次ぎ承認
米国が仲介するイスラエルとパレスチナの和平交渉が行き詰まるなか、南米諸国が12月に入って相次いでパレスチナを国家承認しています。背景には「(世界の問題に)南米諸国が連携して対処する」(ブラジル外相)という同国の外交戦略がうかがえます。
きっかけはブラジルが3日、パレスチナの国家承認を発表したこと。イスラエルがガザ地区やヨルダン川西岸を占領した、1967年の第3次中東戦争以前の領域を、パレスチナの領土として認める内容です。
これに続いて、アルゼンチン、ウルグアイ、ボリビア、エクアドルが承認を発表しました。
報道によると、他の南米諸国も同様の措置を検討中です。チリの全政党の代表は20日、同国外相と会見し、パレスチナ国家の承認を政府に迫りました。
南米諸国の動きを促進しているのが、ブラジルの外交戦略です。ルラ大統領は20日、首都ブラジリアで演説。「中東和平交渉を進めるには(米国以外の)他国も必要だ」と述べ、南米諸国の役割を強調しました。
同大統領は、その根拠として、▽南米諸国がアラブ諸国と2度首脳会議を開き、関係を強めている▽今年5月にはブラジルとトルコの仲介でイランが核燃料交換に合意した―ことなどを挙げました。
南米南部共同市場(メルコスル)は16、17の両日、ブラジルで首脳会議を開催。同国のアモリン外相は、「南米は団結してこそ効果的に問題を扱い、(他地域と)同等の立場で交渉に臨める」と語りました。アルゼンチンとウルグアイがパレスチナ国家承認に踏み切ったのも、メルコスルの枠内で合意があったからだとされます。
パレスチナ側は、南米諸国の動きを「和平に向けた戦略を強化するもの」と歓迎。イスラエル政府は「和平プロセスに害を与える」と反発しています。
米国のウィリアム・バーンズ国務次官は10日、「パレスチナ国家承認は時期尚早」と南米諸国を批判しました。これに対し、アルゼンチンのティメルマン外相は「主権国家の行動について米国が意見することは適切でない」と反論しました。
南米南部共同市場 関税同盟として1995年に発足。アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ブラジルの原加盟4カ国に加え、2006年にベネズエラが加盟しました。準加盟国はチリ、ボリビア、ペルー、コロンビア、エクアドル。