2010年12月31日(金)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
「除夜の妻白鳥のごと湯浴(あ)みをり」。ことし夏に亡くなった俳人、森澄雄の代表作です▼おおみそか。新年の準備も、すっかり終わったのでしょう。一息ついて湯浴みする妻。湯船から時折聞こえてくる、白鳥が羽づくろいしているような水音。作者の心は、一年の苦楽をともにした妻への感謝と愛情で満ちているようです▼高浜虚子の作品でもっとも知られる一句も、年の終わりと始まりを詠みます。「去年(こぞ)今年(ことし)貫く棒の如(ごと)きもの」。新しい暦に変わっても貫くものとは、なんでしょう。人間の生き方や信念か。悠久の時間が流れる宇宙と自然の法則か▼2010年が終わろうとしています。21世紀の最初の10年も終わろうとしています。期待とは違った10年だったかもしれません。テロと戦争が起こり、いまも続きます。地球の環境は、たびたびの警告にもかかわらず好転の兆しがみられません。多くの国が、100年に1度あるかないかといわれた経済危機から、まだ抜け出しきれないままです▼暦をつくった人間は、時間の流れを「去年今年」、1年、10年と区切り、節目に過去を振り返り、将来を考えようとしてきました。00年代を顧み、どんな次の10年をめざすのか。人それぞれに、知恵をしぼる2011年がきます▼けれども、やはり“棒のように貫くもの”がいります。反戦平和。人々の生きる権利と民主主義を守る。その一念を曲げないで10年代を語るつもりの、本紙の役目は大きい。あらためて、そう思い知るおおみそかです。