2010年12月29日(水)「しんぶん赤旗」
イスラエル侵攻2年
ガザ 進まぬ復興
水道5日に1度 電力不足の病院 心的外傷続く子ら
封鎖に国際的批判高まる
【カイロ=伴安弘】イスラエルがパレスチナ・ガザ地区を侵攻した日から27日で2年がたちました。イスラエルによる封鎖が依然として続いているため、ガザの復興は遅々として進んでいません。一方で、イスラエルに対する国際的非難は5月末に起きた支援船襲撃事件でいっそう高まっています。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)によると、ガザ市で水道水が使えるのは住民の20%にすぎず、それも5日に1度だけだといいます。
高い失業率
アラブ首長国連邦(UAE)紙ナショナル(27日付)は「失業率は依然高く、(ガザを統治しているイスラム武装抵抗組織)ハマスが効率的な社会サービスを施していないため、食料、水、医薬品などを人道支援に頼らざるを得ない家庭が増えている」と指摘しています。
病院は電力不足に陥ったままで、住宅・学校の建設計画も進んでいません。侵攻時の記憶による子どもたちの心的外傷も癒えていません。
一方で、一部のパレスチナ過激武装グループによるイスラエル領内へのロケット砲攻撃が27日を前に増加。これを理由に、イスラエルがガザ地区に対し砲爆撃を加え、再侵攻の構えさえみせています。
しかし、この間、イスラエルによる封鎖に対する国際的非難の声は高まりました。ガザ住民に支援物資を届けようとした国際支援団体の船をイスラエル軍が公海上で襲撃、トルコ人9人を殺害した事件は、1996年に軍事協力協定を結ぶなど15年間緊密な関係にあったトルコ・イスラエル関係を悪化させました。
トルコのダウトオール外相は25日、イスタンブールで記者団を前に「イスラエルとの和平を回復する用意がある」と述べました。ただし、イスラエルが襲撃事件で謝罪し犠牲者らに補償を行わなければならないと指摘。「公海上でトルコ市民が殺害されたという事実は隠せない」と強調しました。
これに対し、イスラエルのリーベルマン外相は26日、トルコの主張を「あつかましい」と一蹴。「謝罪しなければならないのはテロを支援しているトルコだ」とし、イスラエルには「謝罪の必要はない」と述べました。
イスラエルのネタニヤフ首相も「遺憾の意を示す用意はある」としつつも「謝罪したいとは思わない」と同国のテレビ番組のインタビュー(27日)で語っています。
支援船再び
襲撃で大きな損害を被った支援船「マーリマルマラ」号は修復を終えて26日、イスタンブールの港に帰港。数千人が出迎えました。支援船は事件1周年の来年5月にふたたびガザに向かう計画です。