2010年12月28日(火)「しんぶん赤旗」

外交・開発 今なぜ米が検証

軍事偏重の行き詰まりも


 【ワシントン=小林俊哉】米国務省は、今月半ばに発表した初の「4年ごとの外交・開発計画見直し」(QDDR)に基づき、外交政策を検証するとしています。QDDRは、国防総省が発表する「4年ごとの国防計画見直し」(QDR)にならったもの。背景には、これまでの軍事偏重路線の行き詰まりも垣間見えます。

 国務省は、同報告が(1)国益のいっそうの推進(2)軍とのパートナーシップの改善―に資する青写真だと説明。具体的には、国務省や国際開発局(USAID)の組織改革を通じて、支援事業の効率化に取り組むといいます。

 注目されるのは、QDDR発表の背景にある議論です。

 問題意識の一つは、ブッシュ前政権下では開発政策の主導権が国防総省に握られ、軍事目的に過度に従属させられてきたとの認識です。シンクタンク・新米国安全保障センター(CNAS)は、「とりわけアフガニスタンとイラクへの侵攻以降、国務省、国際開発局は、国防総省に対する政策立案面での実質的影響力を失った」として、「国防総省と文民機構との間にある不均衡の是正」を提言していました。

 このためQDDRは「文民力の強化」を繰り返し強調しています。

 もう一点は、経済危機とともにイラク、アフガニスタンという二つの戦争による出費などで抱えた財政赤字などの国内的制約から、従来型の“積極関与”政策が難しくなっているという認識です。

 オバマ米大統領は、9月に行われた国連ミレニアム開発目標(MDG)サミットで、従来の米国の開発政策は効率的でなかったと主張。今後は支援額自体よりも実際の効果に着目すると述べていました。

 折りしも、ブッシュ前政権流の「無責任な財政政策」から、予算上の制約に見合った外交・開発・軍事方針への転換を求める声が強まっている最中です。スタインバーグ国務副長官が「(QDDRが)開発面での持続可能性に焦点を当てた」と強調するゆえんです。

 しかし、今後はまだ不透明です。軍事戦略との過度の一体化や、なりふり構わず米国の国益を第一に置く開発政策には、常に批判がありました。

 一方で、世界の貧困・開発対策では、国連や世銀が主導性を強めています。世銀では米国が拒否権を依然として持つとはいえ、中国など途上国の議決権比率が増しつつあります。MDGサミットは、先進国が政府開発援助(ODA)を国民総生産(GNP)比0・7%に引き上げるという約束を改めて確認し、米国も誓約しました。

 変わり行く世界の中で米国の開発政策のあり方が問われています。


 米国際開発局 米連邦政府の組織で、軍事以外の海外援助を担当します。当初は大統領直属でしたが、現在は、国務省の監督下にあります。発展途上国が関係する国際経済問題について、総合的な政策立案や調整にあたります。





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