2010年12月28日(火)「しんぶん赤旗」

現代の奴隷制度 人身売買なくそう

2700万人が被害か エジプトで国際会議


 【カイロ=伴安弘】「現代の奴隷制度」ともいわれる人身売買が世界の隠れた、大きな問題となっています。人身売買の犠牲者は2700万人ともみられ、とくに女性や子どもが対象にされています。これとたたかう国連主催のフォーラムが10、11の両日、エジプトのルクソールで開かれました。

 国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は、会議に宛てたビデオメッセージで、人身売買が、家事手伝い、偽装結婚や性的取引を強いられる女性、非人間的な条件で低賃金や報酬なしの労働を迫られる男性、子どもの物乞い・売春・奴隷労働・兵士など多くの形で存在すると指摘。これらをなくすため今年、国連総会がグローバル行動計画を打ち出し、その犠牲者の救済のための基金を設立したことを明らかにしました。

 この会議はエジプトのムバラク大統領の夫人スザンさんが創設した組織が共催しました。会議でムバラク夫人は冒頭、人身売買の実態を告発しました。

 「娘たちが大都市でまともな仕事に就けるといわれ貧困家庭が金を受け取る。しかし、彼女たちは12歳で“夜の女”になる」「炭鉱やダイヤモンド鉱で働かされる少年たちは非人間的な労働条件の下に置かれている」「路上生活の少年が誘拐され眠らされ、気付いたら彼の腎臓が市場で売買されている」

 会議は人身売買をなくすための各国政府の役割、観光業などの企業や青年の間での啓発、マスメディアの役割を論議し、行動計画「ルクソール議定書」を採択しました。

 エジプトでは2002年に女性の結婚年齢を16歳から18歳に引き上げる法が成立。「結婚」を隠れ蓑(みの)にした人身売買をなくすためです。これに違反すれば最低3年の禁錮刑が科せられます。

 エジプトでの人身売買とそれをなくす取り組みをまとめた英BBCの番組によると、18歳未満の少女の結婚は、法案が通過した後の最初の年には1万件以上、09年にもなお9000件見つかりました。ある少女は900ドル(約7万5000円)で、年長の男性と結婚させられ、その男性の先妻の息子の性暴力にさらされました。

 イスラム教の宗教界も人身売買をなくす取り組みに参加、これをイスラム法に反するとするファトワ(勧告)が出されました。政府の取り組みで、これまでに「仲人」40人が3年の禁錮刑を科されていますが、これは中東諸国では初めてのことです。





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