2010年12月26日(日)「しんぶん赤旗」

沖縄脅す閣僚発言に県民怒り

「学校・病院移す 普天間は継続」

住民に「どけ」は通用しない 安全基準守れ 撤去こそ解決


 前原誠司外相が21日に沖縄県を訪れ、米軍普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古への「移設」が実現するまで同基地の「継続使用」と、「危険性除去」のため学校や病院など周辺施設の移転検討に言及、仙谷由人官房長官がこれを追認しました。県民の新たな怒りを呼んでいます。(青野圭)


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(写真)米軍機墜落を想定して避難訓練をする普天間第二小学校の上空をかすめる米軍輸送機=6月、沖縄県宜野湾市

 宜野湾市の安里猛市長は「もし辺野古に新たな基地ができなければ継続使用する、固定化するというのは脅しのように聞こえます」と不快感を示すとともに、「クリアゾーンの危険地域には3600人もが居住しており、学校や病院を移すだけでは『危険性の除去』になりません」といいます。

 同市によると、基地周辺には市民9万人以上が居住し、120カ所以上の公共施設などがあります。フェンス1枚をはさんで、基地周辺には市民の日常の暮らしがあるのです。

協定は形骸化

 米軍は、滑走路先端と延長線上の部分を、とくに危険だとして区域内の使用を禁じるクリアゾーンに設定しています。しかし、クリアゾーンには普天間第二小学校などの学校や保育所、病院など18もの公共施設、約800棟の住宅や民間施設があります。

 安里市長は「『危険性の除去』というのであれば、まずは安全基準を守る。これまで取り決めた騒音防止協定(1996年)や飛行ルールを守ることが先決ではないか」と話します。

 普天間基地爆音訴訟の控訴審判決(7月、福岡高裁那覇支部)も「騒音防止協定を遵守(じゅんしゅ)させ…るための適切な措置をとっておらず…形骸化していると言っても過言ではない」と断罪しました。

 無法状態を放置しておいて、前原外相は21日の記者会見で「住民に『どけ』ということで、県民の理解を得られるのか」と質問され激高しましたが、理解など得られるはずがありません。

 クリアゾーン付近に研究室がある鎌田隆・沖縄国際大名誉教授は政府の態度にあきれています。

 「2004年、沖国大に米軍ヘリが墜落・炎上したときも、『基地のそばに大学をつくった方がおかしい』という倒錯した議論がありました。基地を前提にした発想です。危険な状況をつくり出したのは日米両政府なのに、それを棚上げして、あたかも学校の方が悪いと言わんばかりの逆転した議論だ。子どもたちの学ぶ権利など眼中にない」

実験の結果は

 「危険性の除去」を名目に、普天間第二小学校を移転しようとする動きは、30年前からありました。

 1977年に革新市政を倒して誕生した保守市政の時代。学校跡地を米軍が接収するとの条件で米軍住宅地への移転案まで出ましたが、結局破たんしました。移転先は大きな段差があり、用地買収に約30億円もかかることが分かりました。

 「米軍基地が集中する宜野湾市で、移転など、そもそもできない話です」。日本共産党の元宜野湾市議、知念忠二さんは批判します。

 「だからこそ撤去なのです。“二十数年前の実験”で不可能が証明されているにもかかわらず、再び持ち出してくる菅直人政権のやり方は、『新しい基地を造らせない』という沖縄の総意を踏みにじる暴挙以外の何物でもない」

 このとき、市議会は自民党など保守勢力も含む全会一致で現在地での建て替えを決議。しかも、市民は文部省基準の3分の1しか学校用地がない現状を打開するため、米軍に迫り、基地用地を開放させたのです。「『危険性除去』の唯一、現実的な解決策が、市民側の移転などではなく、米軍基地の整理・縮小、撤去へと向かう道だということは“二十数年前の実験”で証明されています」と知念さん。

 「前原発言は一大臣の思いつきなどではありません。少なくとも今年8月には、本土マスコミを巻き込んで“危険性除去のために移転すべき”だとのキャンペーンが展開されていました。民主党政権による日米同盟強化のキャンペーンの一環なのは明らかです」


 

クリアゾーン 土地利用禁止区域。航空機事故が起きる可能性が高いとして、米空軍、米海兵隊の飛行場安全基準で土地利用を禁じている区域。





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