2010年12月25日(土)「しんぶん赤旗」
主張
2011年度予算案
財界と米軍に甘く家計に辛い
2011年度予算の政府案が決まりました。一般会計の総額は92・4兆円で過去最大規模です。
国債の元利払いに充てる国債費は21・5兆円、国債費を除く歳出は71兆円を計上しました。「元気な日本復活特別枠」は2・1兆円で、当初想定した1兆円程度から大幅に膨らみました。
41兆円にとどまった税収に対して新規国債の発行額は44・3兆円と、2年連続で借金が税収を上回りました。税外収入は7兆円に上っています。
本末転倒の姿勢では
輸出大企業の利益が回復する一方で国民の暮らしは厳しさが続いています。5%台の失業率、300万人を超える失業者、中でも1年以上の長期失業が128万人に膨らみ、雇用改善の見通しは立っていません。民間給与の減少に歯止めがかからず、年収200万円以下の労働者が増えて全体の4分の1を占め、貧困の広がりもますます深刻になっています。
もとより財政は、米国や財界の要求で1990年代に膨張した大型公共事業、5兆円規模の軍事費、大盤振る舞いの大企業・大資産家減税によって“火の車”です。巨額の財政赤字を生んだ原因にメスを入れ、いかに暮らしを守る財源を生み出すかが来年度予算の最大のテーマであったはずです。
こんなときに、予算編成で民主党政権が最も精力を費やしたのは大企業減税でした。菅直人首相の指示で、財界の要求通りに、国と地方をあわせた法人税率(法人実効税率)を5%引き下げることになりました。財務省の試算でも最大で2兆円を超える減税です。
その財源として、財務省は欠損金の繰越控除制度や研究開発減税の縮小などで8000億円程度をまかなうとしています。しかし、これらは本来なら国民の暮らしの予算に充当すべき財源です。「日経」の集計によれば上場企業の手元資金は1年間で6・9兆円増えて64兆円を突破しました。大企業の内部留保は240兆円を超えています。空前の金余り状態の大企業に減税しても国内の投資や雇用に回る効果は期待できません。
直前まで本則の20%に戻す方向で議論していた証券優遇税制は業界の圧力で2年間延長することになりました。米軍「思いやり予算」を「特別枠」に計上して米政府の要求に従って総額を維持し、軍事費も5兆円近い規模を続けています。
大切な財源を金余りの大企業や大株主、軍事費に回す一方で、基礎年金の国庫負担を維持する「安定」財源がない、年金は物価下落に合わせて削減する―。小学校の少人数学級の予算を削り、生活保護の老齢加算の復活には背を向け、高齢者医療や介護保険で国民負担増を議論する―。まったくの本末転倒です。
暮らしを最優先にして
野田佳彦財務相は消費税増税を12年度から「間に合わせる」と語っています。財源が乏しくて予算編成に苦労するのは、財界と米軍に甘く、暮らしに辛い本末転倒の予算編成を続けているからであり、消費税を増税しないからではありません。財政危機のツケを、自民党政権の放漫財政のツケも含めて国民に転嫁する消費税増税を許すわけにはいきません。
軍事費と大企業・大資産家減税にメスを入れ、暮らし最優先の予算に転換するよう求めます。
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