2010年12月23日(木)「しんぶん赤旗」
主張
日航・整理解雇
日本の労働者全体への攻撃だ
「12月31日付で解雇いたします」。こともあろうに大みそかの首切り通知。受け取った労働者と家族がどんな思いをするか考えもせず、こんな残酷な文書を郵便で送りつける前近代的な企業が存在することに強い憤りを覚えます。
「4要件」踏みにじり
日本航空(JAL)が強行したパイロットと客室乗務員202人の整理解雇は、たんに日航社内の問題ではなく、労働者全体の生活と権利にかかわる大問題です。このような解雇が、企業全体に広がったら、まさしく日本は首切り自由社会になってしまいます。
重大視する必要があるのは「整理解雇の4要件」を満たさない解雇は無効というルールを完全に無視し、踏みにじっていることです。経営危機に陥った企業が実施する整理解雇は、何の責任もない労働者を名指しして首を切るという非情なものだけに、企業が自由勝手にできることではありません。労働者の長年にわたる解雇撤回闘争をつうじて判例法理として確立された厳しい条件があります。
それが「整理解雇の4要件」です。(1)解雇による人員削減がどうしても必要であること(2)希望退職や一時帰休など解雇回避の努力がつくされたこと(3)解雇者の人選が客観的、合理的であること(4)解雇手続きが妥当であること―。この要件を満たさない解雇は「解雇権の乱用」として違法であり、無効となります。これが企業の自由勝手を許さず、不当解雇から労働者と家族を守る重要な役割をはたしています。
日航の場合、1500人の人員削減目標が1700人を超える希望退職によって超過達成しています。営業利益も10月までの累計で1327億円に達し、ことし2月に立てた計画を大幅に上回っています。整理解雇しなければならない理由はまったくありません。
また病歴や年齢の高さを人選基準にしていることや、整理解雇回避のために労働組合が提案したワークシェアリング(仕事の分かち合い)を拒否し、誠意をもって交渉して合意をえる姿勢がみられないことなど、ILO条約にも反する不当なものです。これは再就職先の確保を含めて最後まで労働組合との合意に努力したヨーロッパの航空会社の事例と比べてあまりにも大きな違いです。
このような解雇は絶対に認めるわけにはゆきません。日航の経営破綻の原因は、米国からの大型航空機の大量購入、過大な需要予測と政治家の思惑による地方空港の乱造と不採算路線への運航強制など、対米従属のゆがんだ航空行政にあります。この根本に口をつぐんだまま、コスト削減の必要性だけで労働者に犠牲を押し付けるやり方は、絶対に許せません。
国民的な支援強めて
日航の整理解雇撤回を求めるたたかいは、労働者の雇用と権利を守り、利益優先から安全優先の公共交通機関をつくる重要な国民的な意義をもっています。今回の整理解雇で、大量の解雇通告をうけている日航キャビンクルーユニオンは24、25の両日、ストライキを決行します。幅広い労働組合、市民団体、弁護士などが結集した国民支援共闘会議が27日に結成されます。国際的な連帯行動も広がろうとしています。国民的な包囲で道理のない日航の暴挙をくい止めようではありませんか。
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