2010年12月23日(木)「しんぶん赤旗」
日航 整理解雇
年齢差別 欧州は禁止
信条・労組・年齢…あらゆる差別回避 エールフランスKLMグループ
日本航空が強行した202人にのぼるパイロットと客室乗務員の整理解雇は、年齢で対象者を決めるという明確な年齢差別です。これは、ILO(国際労働機関)とヨーロッパなどで確立されている基準からみて、非常識きわまりないものです。
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EU(ヨーロッパ連合)には年齢差別を禁止する指令が存在します。この法的規制を背景に、ヨーロッパ大手の航空会社では、年齢を理由とした差別を禁止しています。
日航が整理解雇の人選基準としてあげた一つが、年齢基準でした。
パイロットの場合=副操縦士は48歳以上、機長は55歳以上。
客室乗務員の場合=53歳以上。
EUの基準と比べると、はっきりした違いがあります。
仏エールフランス航空とオランダKLM航空が合併して誕生したエールフランスKLMグループは、労働者代表とのあいだで「社会権・倫理憲章」を締結し、2008年3月から発効しています。
前文で、国際人権規約やEU基本権憲章に定められた人間の尊厳と自由、平等、連帯という普遍的な価値を支持すると宣言しています。
第7項が年齢差別を禁止した「平等」に関する規定です。次のように明記しています。
「エールフランスKLMグループは、人種、皮膚の色、民族的あるいは社会的出身、宗教あるいは信条、政治的あるいは労働組合の選択、国籍、障害、年齢、性的志向を含むあらゆる形態の差別を回避する。雇用と労働条件、キャリアの機会、報酬に関して男女間で平等が保障されなければならない」
雇用されてから雇用の終了にいたるまでのすべての段階で、年齢を理由とする差別を禁止しているのです。
独ルフトハンザ航空は毎年、「バランス」と題する企業の社会的責任に関する報告書を発表しています。2010年版報告書を見ると―。
「ジェンダー(性)、年齢、皮膚の色、宗教、性的志向、障害といった特性は、社員の選別において役割を果たさない。社員の選別は、職業上と社会的な適性のみにもとづいて決定される」
ルフトハンザ航空でも、年齢を基準に社員を選別しない原則が確立しています。
JALグループの企業理念がホームページに掲載されています。「お客さま、文化、そしてこころを結び、日本と世界の平和と繁栄に貢献します」「ひととそのこころを大切にする、公正で働き甲斐(がい)のある企業風土を築きます」とあります。日航経営者は、整理解雇の基準が自ら定めた企業理念に恥じないといえるのか―。 (党国民運動委員会・筒井晴彦)
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