2010年12月22日(水)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
新聞記者の書いた記事が紙面に載るまでに、越える関所がいくつかあります。まずは、点検するデスクが待ち構えます▼デスクが赤いペンで入れる直しを、「赤字」といいます。赤字の入れ方で、デスクのくせや考えが分かります。政府の高齢者医療制度改革会議がまとめた最終報告も、中間の報告に赤字が入ったまま公表され、どんな思いの直しなのか、察しがつきやすい▼主題は、75歳以上のお年寄りを差別する後期高齢者医療制度の廃止です。次のような具合に赤字が入ります。制度が「国民の理解を得ることができなかった」は、「問題があり、国民の十分な理解も得ることができなかった」へ▼太字で引用した部分が赤字です。健康診査の「受診率が低下したこと等の問題がある」は、「…等の問題も指摘された」に。75歳以上の高齢者の受診率が落ちた事実は、厚生労働省も認めていたのですが▼「廃止」で「より良い制度とする」は、「…制度を目指すこととした」へ。いまの制度に未練がありそうで、“よりよく改める”と胸を張れません。改革会議は、いまのしくみをいじったうえでまたも別勘定の保険に75歳以上の人を入らせる、「新たな制度」をもちだしました。会議の議論でも、「看板のかけ替えにすぎない」といわれた代物です▼お年寄りをやっかい者あつかいし、人の尊厳を奪う後期高齢者医療制度。民主党は、昨年の総選挙で訴えました。「年齢で差別する制度を廃止」する、と。いまさら赤字で直せない公約です。