2010年12月22日(水)「しんぶん赤旗」
主張
公契約法・条例
貧困なくす地方からのうねり
いま、国や地方自治体が発注する事業で働く労働者に人間らしく働くことができる賃金を保障するための「公契約法・条例」をめざす動きが全国に広がっています。
川崎市では15日、政令市では初、全国では2番目の公契約条例が全会一致で可決されました。全国初となった条例が2月に施行された千葉県野田市では市庁舎清掃委託事業で働く人の賃金改善など効果をあげています。北海道函館市、東京都国分寺市、日野市などでも、さまざまな取り組みがすすんでいます。
「安かろう、悪かろう」
「公契約」とは、国や地方自治体など公の機関が公共工事や印刷などの発注、物品の調達、さらに施設管理の委託にあたって民間業者と結ぶ契約のことです。現場では、深刻な実態があります。談合問題からはじまった「入札改革」で、競争入札でのダンピング(極端な安値)での入札が横行し、そこで働く労働者の賃金にしわ寄せされています。
公共工事では、建設労働者の賃金の平均日額が民間工事を下回る場合が多く、しかも年々引き下げられています。民営化された保育所や民間に委託された清掃など、自治体が発注する委託・契約では、年間の所得が200万円にも及ばない不安定な労働が広がっています。国や自治体が、そこで働く労働者の賃金を考慮せず、コスト削減一辺倒で発注することが、「官製ワーキングプア(働く貧困層)」を大量に生んでいるのです。
各地の自治体で、安値で受注した民間業者が立ち行かなくなって事業を続けられなくなり、ゴミ収集事業が大混乱になるといったことも起きています。埼玉県ふじみ野市で2006年に起きたプール事故は、そうした「安上がり行政」の最悪のケースです。「安かろう、悪かろう」の公共サービスが、質の確保を難しくし、住民の利益を大きく損なっています。
多くの自治体で、労働組合や中小企業団体、住民が力を合わせ、受託業者で働く労働者の適正な賃金を確保できる仕組みをつくる公契約条例の実現をめざす運動が広がっています。日本共産党は各地で、住民と協力して議会で積極的な提案を重ねています。国会でも、国の公契約法の実現をねばりづよく求め、経済産業省や総務省に前向きな検討を約束させました。
昨年7月に施行された「公共サービス基本法」は「公共サービスの実施に従事する者の適正な労働条件の確保その他の労働環境の整備に関し必要な施策を講ずるよう務めるものとする」としましたが、あくまで努力義務にすぎません。真に役立つ公契約法・条例の実現を国や自治体に求める意見書などを採択した議会は33都府県803区市町村にまで広がっています(6月1日現在)。
地域経済の活性化も
中央段階では、公明党も「公契約法の早期制定」(10月、全国建設労働組合総連合大会)を表明するなど、国民、住民の大きな運動が変化を作り出しています。
国や自治体が、生活できる賃金など人間らしく働くことのできる労働条件を定めることは、公共サービスの質を向上させ、賃金を底上げして、地域経済の活性化にもつながります。貧困をなくす地域からのうねりを広げることが、いま強く求められています。