2010年12月21日(火)「しんぶん赤旗」

高齢者差別そのまま

政府が医療「新制度」最終報告


 後期高齢者医療制度に代わる「新制度」を検討してきた政府の高齢者医療制度改革会議は20日、75歳以上の高齢者を差別して別勘定で運営する現行制度の仕組みを温存した最終報告書をとりまとめました。

 報告書には、70〜74歳の患者負担を2倍化(1割負担から2割負担に)することや、75歳以上の低所得者に対する保険料軽減措置の縮小を盛り込みました。細川律夫厚生労働相は、同報告書を受けた関連法案を来年の「通常国会に提出をめざす」と述べました。

 神田真秋・愛知県知事は、「新制度」について、安定した保険財政のためには「国費の拡充が不可欠」だが、「国は現在と同程度の財政責任から一歩も踏み出していない」と批判。「新制度」にともなう国保広域化(2018年度実施予定)で、財政運営を市町村単位から都道府県に移すことについても「巨大な赤字団体をつくるだけで問題を先送りするだけ」などとする文書を提出し、同報告書への反対を表明しました。

 全国老人クラブ連合会の見坊和雄相談役は、75歳以上の「高齢者を別勘定にすることに反対」と発言しました。


解説

高齢者医療「新制度」

国民の批判の中 混迷

 高齢者医療「新制度」をめぐる情勢は混迷を深めています。厚生労働省の高齢者医療制度改革会議は20日、2013年3月からの「新制度」施行を明記した最終報告書をまとめました。しかし、来年の通常国会に法案提出という当初の計画は崩れつつあります。

 民主党内のワーキングチームは、70〜74歳の患者負担倍増と75歳以上の低所得者向け保険料軽減措置の縮小について「慎重な検討」を求める提言を14日にまとめました。会見した柚木道義衆院議員は政府・与党間での調整や与野党合意の必要を理由に「(法案提出は)年明けの通常国会にすぐというと非常に厳しい」と発言。来年秋の臨時国会まで先送りする選択肢もあることに言及しました。

 来春のいっせい地方選での国民の批判を避ける思惑があるとみられています。

 「新制度」で75歳以上が入る国民健康保険の財政運営を担うとされる都道府県も反発しています。全国知事会は「拙速に新制度に移行する必要性はない」との声明を発表(8日)。「新制度」は後期高齢者医療制度の「単なる看板のかけかえ」だと指摘しています。「現行制度を続けた方が混乱は少なくて済む」との厚労省幹部の発言も伝えられています。

 法案成立の困難から「新制度」実施の時期がずれ込む可能性も指摘され、そうなれば、現行の後期高齢者医療制度がさらに続くことになります。

 民主党政権の公約は高齢者を年齢で差別する後期高齢者医療制度の廃止であり、同制度の存続でも、看板をかけかえただけの「新制度」でもありません。ただちに廃止して、高齢者を差別しない老人保健制度に戻すべきです。(杉本恒如)





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