2010年12月20日(月)「しんぶん赤旗」
主張
菅首相の沖縄訪問
「甘受」の強制やめるべきだ
菅直人首相が沖縄県を訪問し、11月の知事選で再選された仲井真弘多氏と会談しました。米軍普天間基地を名護市辺野古に「移設」するのが「ベター」だと、「日米合意」推進の立場を改めて表明したことに批判が高まっています。知事が県民世論を背景に、「県内移設はすべてバッド(悪)の系列にしかなっていない」と拒否したのは当然です。つい先日には仙谷由人官房長官が、辺野古「移設」を「県民に甘受してもらいたい」と発言し、撤回に追い込まれたばかりです。「日米合意」を最優先して県民の意思を踏みにじるのは、もはやきっぱりとやめるべきです。
県民の意思引き返さない
沖縄を訪問した菅首相は、「日米合意は撤回せよ」「県民は歓迎しない」という強い批判の声に包まれました。米軍普天間基地の撤去を求め、名護市などへの「県内たらいまわし」を許さない県民世論は、度重なる県民大会や地方選などを通じ、もはや後戻りすることはないところまできています。
さきの知事選でも、普天間基地の閉鎖・返還を求め、「県内移設」反対を明確に主張した伊波洋一前宜野湾市長にたいし、前回知事選では新基地建設を容認した仲井真氏も、普天間基地の「県外移設」を掲げました。選挙後は仲井真氏も、「県内移設はきわめて困難」などの発言を重ねています。
県民の意思がこれほど明確になってもなお「日米合意」にしがみつき、沖縄に「県内移設」を押し付けようとする政府の態度は異常です。戦後久しく米軍基地に苦しめられてきた県民の心を知ろうとさえしないものであり、自民党政権を終わらせた国民の意思を踏みにじるものです。
「県内移設」に固執する菅政権の主張に、道理がないことは明らかです。昨年の総選挙中の「国外、最低でも県外」の公約を裏切って「県内移設」を合意した鳩山由紀夫前首相は、「学べば学ぶほど」沖縄の米海兵隊の「抑止力」としての役割が明らかになったと強弁しましたが、米国が海外で始める戦争に“いの一番”で駆けつける海兵隊が日本を守る「抑止力」などでないのは明らかです。まさに「殴りこみ部隊」であり、「侵略力」そのものです。
普天間基地を県内に「移設」しても県民の基地負担は軽減できるというのも、根拠がありません。辺野古に建設される巨大な新基地に配備されるのはこれまでよりも桁外れに騒音などの被害が大きい最新鋭機のオスプレイであり、県民の負担は軽減されるどころかより深刻になります。
菅首相が沖縄への一括交付金は「別枠」にするなどと、「あめ」をちらつかせて「県内移設」を受け入れさせようとしたのはまさに論外です。自民党政権時代と同じ手法です。県民は基地に依存しない経済発展を切望しています。「あめ」がほしければ「むち」を受け入れよと迫るのは県民の心を金で買うに等しいさもしい発想です。
「日米合意」撤回こそ
沖縄県民が求めているのは、「日米合意」を撤回し、普天間基地など沖縄の米軍基地撤去を実現することです。沖縄だけでなく、全国でおこなわれた世論調査でも、59%の国民が「日米合意見直し」を求めています(「朝日」16日付)。
こうした国民の声にこたえることこそ、民主党政権の責任です。