2010年12月19日(日)「しんぶん赤旗」
主張
35人学級
後退する政府、包囲する運動を
2011年度の予算編成をめぐり、高木義明文部科学相と野田佳彦財務相らが折衝し、少人数学級計画の大幅な後退で合意しました。来年度小学校1年生と2年生で35人学級を実施するはずだった計画を、小学校1年生だけにするというものです。
高木文科相は、「(少人数学級の推進という)マニフェストに書かれていることを達成できた」とのべましたが、とても胸をはれるような中身ではありません。
財政は理由にならない
35人学級の実施に必要な教員4000人のうち、半分近くの1700人は今ある少人数指導等のための教員定数を廃止し、ふりむけるといいます。この定数は地方独自の少人数学級実施にも活用されているもので、例えば中学1年生で少人数学級をおこなっていた自治体はそのための教員を引きはがされることになります。
さらに、8カ年で小中学校全体を少人数学級にするという当初の計画は「来年度以降改めて協議」するとされ、完全実施は宙に浮くことになりました。
大幅後退の論理は「厳しい財政状況」です。しかし、財政が厳しいのではなく、財政運営のやり方が間違っています。
たとえば、支出する必要のない米軍「思いやり予算」については「特別枠」に盛り込んだ1859億円の要求に満額回答です。文科省が要求した少人数学級の経費はわずか184億円、8年後の完成時でも1200億円です。法人税率は5%引き下げ、金余りの大企業に減税し、歳入に穴をあけようとしているありさまです。
民主党政権が、このような自民党時代とかわらない財政運営をやめなければ、教育や社会保障の財源を確保できません。
少人数学級の実現は、国民の運動が一貫してとりくんできた課題です。子どもの教育の困難が増す中で国民の支持が広がり、教育委員会や校長・教頭先生も実施を主張するようになりました。5年前には中央教育審議会(文科相の諮問機関)でも多数派となり当時の文科相も賛意を示しましたが、財界と自公政府はその動きをよってたかってつぶしてきました。
1学級40人やそれに近い学級では「落ちこぼし」が生まれやすくなります。7日に発表された国際的な学習到達度調査(PISA)でも日本の落ちこぼされた子どもの多さが目立ちました。学級規模が小さくなれば、一人ひとりのつまずきをていねいに指導でき、子どもの発言の機会もふえます。
生活面でも、いじめ問題への迅速で、ていねいな対応、悩みをかかえる子どものケアなどに少人数学級は有効です。欧米では1学級30人以下が当たり前です。
道理は国民の側にある
経過をみれば、今回政府が部分的にせよ35人学級を認めたことは、国民の運動の大事な通過点です。いま求められるのは、少人数学級の扉を開け切るための世論と運動をいっそう強めることです。
道理は国民の側にあります。理不尽な財務省・政府をおいつめ、政府に少人数学級の決断をせまるとりくみをひろげましょう。
国制度への地方独自の上乗せを進め、その面からも少人数学級の大波をおこしましょう。日本共産党は、国民のみなさんと力をあわせて、全力で奮闘する決意です。
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