2010年12月19日(日)「しんぶん赤旗」

COP16カンクン合意どう見る

世界の流れに逆行する日本政府

京都議定書問題


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(写真)COP16閣僚級会合=9日、カンクン(坂口明撮影)

 メキシコ・カンクンで開かれていた国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)は11日未明、2013年以降の地球温暖化対策の新たな国際協定づくりの土台となる二つの決定=通称「カンクン合意」を採択しました。同合意は、難航する交渉を反映した複雑さ、弱さがありますが、今後の前進への重要な要素を含んでいます。

第2約束期間の設定が大勢に

 COP16をめぐり日本では、日本に「不利」な京都議定書「延長」が「先送り」されたのが「成果」だとの見方が流れています。真相はどうでしょうか。

 現在の交渉の最大の焦点は、京都議定書第1約束期間(08〜12年)の実績に基づき、13年以降の対策をどう築きあげるかにあります。この国際協定が、どんな形となるかは、次のように、さまざまな可能性があります。

 (1)先進国と途上国の取り組みを一括した単一の新議定書。

 (2)京都議定書第2約束期間と、米国や途上国を対象とした新議定書など、複数の議定書の併存。

 (3)これらの合意に至らない段階での当面の措置としての京都議定書第2約束期間の設置やCOP決定など。

 先進国で最大の温室効果ガス排出国でありながら京都議定書から離脱した米国の扱いが、大きな論点です。

 これらは一体で検討される問題であり、そこにどこまで接近できるかがCOP16の課題でした。京都議定書の第2約束期間の設置だけがCOP16で決定される予定は、最初からありませんでした。

 ではCOP16は、13年以降の新協定づくりにどこまで接近したのか。

 京都議定書に参加する先進国の今後の削減約束をめぐる作業部会に関する決定は、その作業結果を「できるだけ早く、第1約束期間と第2約束期間の間の空白がないように採択する」と合意しました。また、「第2約束期間の(削減量比較の)基準年を1990年とする」と述べています。これらは、第2約束期間設置を前提とした規定です。

 ただし、「各国の削減数値目標は別途、付属書の表に示す」という条項に、「表の内容は、議定書締約国の立場や、(付属書改正に関する)議定書21条7項のもとでの締約国の権利を侵害しない」という脚注が付けられました。

 日本政府や財界は、これを鬼の首を取ったように喜んでいます。この脚注は「第2約束期間のもとで決める削減目標を拒否することができる権利が各国にあると記載」(日経12日付)したものだとされています。

 しかし、この決定が第2約束期間設定を前提とした記述になっているのは明白です。脚注が言及する議定書21条7項は、第2約束期間で各国の目標を決める際、各国の「書面による同意」が必要だとの民主的原則を確認したものです。今回の決定で国際交渉の大きな流れは明らかになりました。

 カンクン合意はまた、13年以降の取り組みには先進国も途上国も参加することを、正式に確認しました。これらは、来年のCOP17で法的拘束力をもつ新たな国際協定に合意する重要な土台となりえます。

「大企業が説得」英保守系紙指摘

 日本政府はCOP16の冒頭で、「いかなる条件、状況下でも京都議定書の第2約束期間の下で目標を書き込むことは絶対合意しない」と表明しました。これが、世界の温暖化防止の大きな流れに逆行することは、カンクン合意そのものから明らかです。

 英保守系紙「テレグラフ」(電子版14日)は、日本のこの態度表明を「非外交的な無条件性」だと指摘。これが「第三世界諸国を激怒させることになった」と述べました。

 日本政府がこうした態度をとる理由について同紙は、「“京都を殺して新たな交渉枠組みを生まれさせれば国際的信認を得る”と、国内で単純素朴にも大企業に説得されたからのようだ」と解説。「しかし実際には日本は、捕鯨問題で同国が受けている汚名を隅に追いやるほどの非難を浴びることになった」と述べています。 (坂口明)

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