2010年12月18日(土)「しんぶん赤旗」

主張

新「防衛大綱」

また海外でたたかうつもりか


 菅直人民主党政権が閣議決定した「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」(「中期防」)は、平和を求める国民の願いに背を向け、危険な日米軍事同盟の強化と軍備増強をすすめる計画です。

 自民党政権でさえ口にしてきた「専守防衛」などの原則を完全に空洞化し、北朝鮮や中国の「脅威」をあおりたて国内でも海外でも戦争に備える態勢を強めるもので、菅政権の危険な本質をうきぼりにしています。

戦争態勢づくりが加速

 2011年以降の軍備増強の方針を定める「大綱」は「『基盤的防衛力構想』によることなく」、「『動的防衛力』を構築する」とのべています。自民党政権時代の「基盤的防衛力」構想は、自衛隊の役割を「日本防衛」に限定することを建前に、軍事同盟と軍拡を正当化してきたものです。新「大綱」がそれさえ投げ捨てるのは重大です。

 「動的防衛力」構想は、必要に応じて自衛隊をどこにでも緊急展開できる体制にし、戦争に備えるというものです。北朝鮮や中国などの周辺諸国の軍事動向に対抗することを口実に軍備を増強し、自衛隊を自由に配備・運用することができるものとなっています。

 先日来日した米統合参謀本部のマレン議長は、日米韓の「共同の即応体制を深める」と、米韓共同演習への参加などを求めましたが、「大綱」の内容がこうした言い分にそっていることは明らかです。

 見過ごせないのは「大綱」が、日本の「南西地域」の軍事態勢強化の方針を持ち出していることです。沖縄の戦闘機部隊の強化や沖縄県与那国島などへの陸上自衛隊の配備、緊急時の部隊展開などが内容です。軍事一辺倒では逆に軍事緊張を高めることにしかなりません。北東アジアの平和にとってまさに有害無益です。

 「動的防衛力」は「国際平和協力活動等」の役割を「能動的に果た(す)」ためでもあります。アメリカがイラクを侵略して始めた戦争のような場合に、時間をかけずに、素早く海外に派兵できるようにするのが狙いです。国連平和維持活動(PKO)参加5原則のあり方を「検討」するともいっています。海外での戦争態勢を強めるものでしかありません。

 焦点となった「武器輸出三原則」見直しについては「大綱」にもりこまれなかったものの、国際共同開発・生産に参加する方策を「検討する」とのべています。海外への武器輸出をめざす方針に変わりがないことを示したものです。「武器輸出三原則」を突き崩し、日本を他国民の命を奪う「死の商人」国家にする企ては重大であり、こうした見直しや「検討」はきっぱりやめるべきです。

ムダの継続許されない

 「大綱」と「中期防」はこうした軍備増強のために、5年間で総額23兆4900億円使うことをうたっています。年平均にすると4・7兆円です。今年度の軍事費に匹敵します。憲法の平和原則をふみにじりながら、国民に負担を押し付け、巨額の軍事費を出し続けるのは許されません。

 いま日本がやるべきなのは、日本周辺の緊張を高める軍備増強をやめ、憲法9条にもとづく外交力を生かすことです。そのために、新「大綱」と「中期防」を撤回し、日米軍事同盟強化と軍拡の方針を根本から見直すべきです。





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