2010年12月17日(金)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 いよいよ冬本番ですが、秋の虫スズムシの話から。かつて、「リンリ、リンリとスズムシのように騒ぐばかりで」といった首相がいました▼1983年、当時の中曽根首相が、政治倫理を選挙の争点にする野党に向けた言葉です。自分は倫理について語りたくないので、“リンリしか知らない芸のない野党”と逆襲しました。スズムシがかわいそうでした▼ところで今、スズムシは抜きに、「倫理、倫理と騒ぐばかりで…」といってみたい相手があります。「言葉のわりに実がともなわないではないか」と続けて。相手とは、財界団体の日本経団連です▼大学卒や大学院出の人の採用に関する「企業の倫理憲章」。「高い倫理観をもって社会的責任を果たしていく」と宣言する「企業行動憲章」。いずれも日本経団連が定める、財界と大企業の指針です▼経団連はことし9月、「企業行動憲章」を改めました。「高い倫理観をもって社会的責任を…」の部分とともに、次のくだりも書き込みました。「(企業は)雇用を生み出すなど経済社会の発展を担う」。次の文章は削っています。「(企業は)利潤を追求するという経済的主体である」▼政府に、法人税減税を求めた経団連。“減税を雇用に生かしてほしい”との意見に対し、「資本主義でない考え方を導入されては困る」と米倉会長。首相にも、「約束できない」とすげない。一体、なんのための減税なのか。「倫理」「雇用」といいながら、財界がなにより優先させるのは、削った文章の中身です。





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