2010年12月16日(木)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 秋田県の田沢湖は、「青い絵の具を溶かし込んだみたい」とたとえられます。深いるり色の湖水。みつめていると、吸い込まれてゆくような感じを覚えます▼数年前のこと。湖上を遊覧船でめぐっていたら、乗り合わせた人が話しかけてきました。「きれいなるり色は、強い酸性の水が流れ込んできたせいだそうですよ」。さっそく調べてみたのでした▼日本一酸性の強い温泉、玉川温泉の水が玉川を通って入っています。戦争が湖を変えました。国は先の大戦中、発電所と農地をつくるため、田沢湖を天然のダムにして玉川の水を引き込みました。温泉に含まれるアルミニウムの粒子が青色だけを反射し、湖がるり色にみえる、といいます▼強酸性の水で、魚たちは死に絶えました。田沢湖にしかいなかった、美味のクニマスまでが。昨日、そのクニマスが山梨の西湖で生きていると分かりました。田沢湖から消えて70年。どうやら、かつて卵を移していたらしい。「絶滅魚」の再発見は初めてです▼いまは魚の姿が認められますが、公共事業で「死の湖」と化した田沢湖。いま、公共事業で「死の海」になりかねないのが九州の有明海です。政府は、諫早湾を閉め切る水門を開けるよう命じた福岡高裁の判決を受け入れ、上告をあきらめました。判決が生きてきます▼諫早湾の埋め立て閉め切りで、ノリの養殖もタイラギ漁もさっぱりだった漁業者が喜びます。「元の豊かな海が戻ってくるだろう」。というわけで、きのうは朗報が続きました。





もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp