2010年12月16日(木)「しんぶん赤旗」
主張
「思いやり予算」
国民の要求にこたえていない
民主党政権が14日発表した2011年4月以降の在日米軍「思いやり予算」に関する日米合意は、民主党がこれまでの言動にも反し、「思いやり予算」増額を求めるアメリカの要求にこたえていくことを浮き彫りにしたものです。「思いやり予算」を削減・全廃し、在日米軍基地そのものの縮小・撤去を求める国民の要求には、まったくこたえていません。
削減させる意思もない
「思いやり予算」は、在日米軍についての日米地位協定にも違反し、日本が米軍の駐留経費を不当に負担させられているものです。
公表された日米合意は、「思いやり予算」にかかわる日米地位協定24条の特別協定の期限を3年から5年にのばすとともに、今年度予算なみの1881億円を5年間にわたって維持することをうたっています。特別協定対象外の基地建設費も今年度の206億円「以上」とすることを約束しています。文字通り米側の増額要求にこたえたものです。
今年度で期限が切れる特別協定の延長に絡んで行われた日米交渉の焦点は、「思いやり予算」の削減でした。民主党は08年の特別協定延長に反対した経過があります。昨年の政権交代直後の国会では日本共産党の志位和夫委員長が「『思いやり予算』に切り込む意思はあるか」と質問したのに、当時の鳩山由紀夫首相が、「包括的な見直しが必要」だと答弁しました。
にもかかわらず交渉の経緯と合意の内容で明らかになったのは、民主党政権が削減に全力をあげた形跡がまったくないことです。民主党政権は早い段階で「思いやり予算」の総額維持の方針をアメリカに伝えていました。財政のムダをなくすことをうたい文句にした「元気な日本復活特別枠に関する評価会議」(政策コンテスト)でも、何の議論もなしに「思いやり予算」の確保を認めました。
その背景に、「政策コンテスト」の対象にすること自体に「米側から厳しい批判があった」と安住淳防衛副大臣が説明している(11月18日付「朝雲新聞」)ように、アメリカの要求とそれへの屈服があったのは明らかです。
アメリカは交渉にあたって、「思いやり予算」は“恩恵”でなく、アジア軍事戦略のための“分担経費”だと主張しました。在日米軍が日本を守る「抑止力」だという呪縛に縛られ、沖縄・普天間基地問題でも「県内移設」を受け入れた民主党政権の弱みにつけこみ、「抑止力の対価」として「思いやり予算」の増額を受け入れさせたことは重大です。民主党政権がおちいった自民党政権時代と同じ「日米軍事同盟絶対」の路線を打ち破り、日米安保条約そのものの是非を問うことがこの問題でも重要になっています。
対米従属から脱却を
軍事力ではなく外交力でもめごとを解決する方向が世界の大勢となっている中で、日本が「思いやり予算」を負担して、いつまでも在日米軍にいてもらういわれはありません。しかも日本が支出する予算は、「思いやり予算」と米軍再編経費などですでに約3370億円にもなっており、財政上も大問題になっています。
在日米軍基地の縮小・撤去の実現のためにも、国民の暮らしを向上させるためにも、「思いやり予算」の全廃がいよいよ急務です。
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