2010年12月15日(水)「しんぶん赤旗」

規制改革分科会

保険利かない診療増狙う

「花粉症くらいで医者に来るな」 委員の医師から暴言も


 6月に規制緩和の第1次報告をまとめた行政刷新会議の「規制・制度改革分科会」(分科会長・平野達男内閣府副大臣)で、さらなる規制緩和の検討が進められています。

 同分科会は、自公政権時代の「規制改革会議」を引き継いだもの。規制や制度を「改革」することで新たな雇用の創出や生産性の向上につなげるとし、ライフイノベーション(医療、介護、保育)、グリーンイノベーション(環境)、農業・地域活性化の三つのワーキンググループ(WG=作業部会)に分かれて検討作業を進めています。

 行政刷新会議は「行政透明化」を掲げ、同分科会も「政策の決定過程を国民に開かれた形とする」ことをうたっていますが、会議は非公開で、検討項目の詳しい内容も「当面、委員限り」とするなど不透明さが際立っています。

 ライフイノベーションWGの「改革の方向性」は、現行の医療制度について「国民は低い負担で質の高い医療を享受してきた」けれども、医療費が増加するなか「真に必要な医療を整理し、公的保険の適用範囲を再定義することが必要」と明記。複数の委員から、保険外診療の対象を広げることで患者負担を増大させる「混合診療」の拡大を求める声が上がっています。

 「検討項目選定にあたっての論点整理」は「個人があらかじめ延命治療の意思を明確にし、延命治療を希望しない人は保険料を低減してはどうか」といった提案を紹介。WGの委員からも同趣旨の発言が出されています。

 「検討の視点」では「事前規制から事後チェック行政」を強調し、介護サービスの人員・設置基準の見直しや新薬承認の短縮を検討しています。WGの土屋了介主査(財団法人癌研究会顧問)は「医療では安全を隠れみのに事前規制をすべてにかぶせようとする。他の分野も安全といえばそれだけで規制を強化していいとなりかねない」とし、各省庁に対し「事後チェック行政」への転換を徹底するよう求めました。

 委員からは「医療の需要は無限。すべてを満たすことはできない。花粉症ぐらいで医者に来るなよとならないと、全部保険でみていたら回らなくなる」(久住英二ナビタスクリニック立川院長)などの暴論も飛び出しています。

 農業・地域活性化WGの検討項目候補には、米の先物市場の開設や、農協の事業から信用・共済事業を分離することが盛り込まれています。

 米の先物市場の開設は、主食である米を投機の対象としかねないもので、米価を不安定にし、米の生産や流通に混乱を招く恐れの強いものです。

 信用・共済事業は農協の中核事業であり、それを分離すれば農協は成り立たなくなります。農協の解体と、農業・農村の切り捨てにつながるものです。郵政民営化以降、さらなる金融自由化として財界が要求し続けてきました。協同組合という農協の性格を無視し、「農協の一人一票制を見直し、出資額に応じた議決権とする」ことも入っています。

 同分科会では、年内から来年1月をめどにWGの結論を取りまとめる意向です。(佐久間亮)





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