2010年12月15日(水)「しんぶん赤旗」
法人税5%下げ決定
財界歓迎 雇用増は約束せず
財源見通しなし 穴埋めへ消費増税狙う
証券優遇税制は2年延長
政府税制調査会は14日開いた全体会合で現在約40%の法人実効税率(国、地方の合計)を5%引き下げることを決めました。13日夜に菅直人首相が法人実効税率を5%引き下げるよう指示したことを受けて決定したものです。日本経団連の米倉弘昌会長は14日、「菅総理の決断に敬意を表する」とコメントを発表しました。また、上場株式などの譲渡益や配当にかかる税金を軽減している証券優遇税制を13年末まで2年延長することを決めました。自見庄三郎金融担当相(国民新党副代表)と野田佳彦財務相が同日に協議を重ね、合意しました。
財界の意向にそって法人実効税率の引き下げを打ち出した菅首相は、減税理由として企業による国内投資と雇用の拡大をあげています。
ところが財界は、法人税減税による投資、雇用の拡大を約束することを正面から拒否しています。米倉会長は記者団に、「資本主義ではない考え方を導入されては困る」と表明しました。
菅政権は、財界・大企業が大喜びする法人税実効税率5%引き下げを表明したものの、はしごをはずされた格好です。
政府税調の議論でも、法人税率引き下げ効果に疑問が噴出。「投資・雇用の充当よりも、内部留保や借入金の返済に充当することを考えている企業が多い」(財務省提出の資料)との声も出ていました。
さらに、法人実効税率引き下げは、その代替財源をめぐり政府税調の議論は混迷を極め、財源の手当ては一部分しかできていません。
大企業には減税の恩恵を与える一方で、消費税増税によって、国民にそのツケをまわす道筋が見えてきました。
米倉会長は、法人税減税を実行するための代替財源を単年度で確保するという考え方について「木を見て森を見ずだ」(6日の記者会見)と批判。中長期的な税制「改正」の必要性を強調しています。政府は11年度半ばに「消費税を含む税制抜本改革」を取りまとめる方針です。法人税減税を先行させて、後で消費税増税によって穴埋めをするというものです。