2010年12月14日(火)「しんぶん赤旗」

主張

COP16

合意を土台に交渉の前進を


 2013年以降の地球温暖化対策の枠組みを議論する国連の会議(COP16)がメキシコで開かれ、「カンクン合意」を採択しました。先進国と途上国との対立で交渉は難航し、会議の成否が土壇場まで危ぶまれ、多国間交渉による国連プロセスへの信頼を疑問視する声も出たほどでした。合意は温暖化対策に向けた国際社会の意思と協調を示しており、今後の交渉の土台になりうるものです。

京都議定書延長に道

 合意は、産業革命以来の気温上昇を2度未満に抑えるため、世界全体で温室効果ガスの排出を削減する必要を強調しました。先進国と途上国との「共通だが差異ある責任」の原則にそって、先進国は20年までに1990年比で25〜40%削減し、途上国は20年に削減に踏み出すことを確認しました。途上国の対策への支援を強化するとともに、途上国側の排出削減を検証する仕組みをつくることも合意されました。

 先進国と途上国が一体となって排出削減する枠組みに向けた基礎になるといえます。その中核となるのが京都議定書です。

 京都議定書の第1約束期間が12年に終了するのに伴い、13年以降の第2約束期間をどうするかが会議の焦点でした。第1約束期間と第2約束期間との間に空白をつくらない、第2約束期間でも90年を基準年とする、などが合意され、議定書延長への道が開かれたことは重要です。

 日本政府は、第2約束期間での削減義務を負う気は「まったくない」と主張し、温暖化対策に後ろ向きだと強い批判を浴びました。政府の強硬姿勢には、排出削減の義務付けを拒否する財界の意向が反映しています。日本経団連はカンクンに代表団を送り、日本の孤立が鮮明になるなか、京都議定書の延長を拒否する政府の立場がブレないように監視しました。

 先進国最大の排出責任を負う米国も、責任放棄の姿勢を続けています。オバマ米政権は、環境への投資を通じて雇用拡大をはかる「グリーン・ニューディール」を掲げました。しかし、中間選挙での敗北を受け、企業の排出に上限を設定したうえで排出量取引を行う「キャップ・アンド・トレード」の導入を断念するなど、後退が目立ちます。米国の後ろ向き姿勢を転換させるために、国際的圧力を強める必要があります。

 日本政府は京都議定書の延長に反対する理由に、世界第1位と第2位の排出国である中国と米国が参加していないことをあげています。しかし、だからといって日本もやめるというのは、対策に背を向けるものです。議定書を延長し国際協力を拡大することによって米中を取り込むことこそ、排出削減を進める道です。

基本法案は抜本修正を

 京都議定書の扱いの決着は、1年後に南アフリカで開かれるCOP17に持ち越されました。時間との競争で成果をあげるには、政府が議定書延長を拒否する姿勢を変える必要があります。

 日本は25%削減を国際公約にしながら、温暖化対策基本法の制定を先送りするなど、目標を達成するだけの措置をとっていません。温暖化対策基本法案は、政府案に実効性をもたせる抜本的な修正を行ったうえで、早期に成立させる必要があります。





もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp