2010年12月10日(金)「しんぶん赤旗」
400人解雇 黙っていられない
三菱UFJの女性契約社員
金融ユニオン 雇用継続求める
三菱東京UFJ銀行が、店頭でカードを勧誘する契約社員の女性約400人全員を、来年1月末で雇い止めにしようとしています。女性たちは「使い捨てに黙っていられない」と金融ユニオンに加入。トップバンクの社会的責任を問い、雇用継続などを求めています。(酒井慎太郎)
同社広報部などによると、カードの勧誘業務は2004年10月に開始し、当初は派遣で対応していました。3年後の07年10月に直接雇用(6カ月の雇用契約を更新)に変えました。
同社は今年6月、カードの利用不振による赤字業務をやめるとして、契約社員全員の雇い止めを発表。7月末に、来年1月末以降は雇用継続しない条件で、最後の契約更新をさせました。
夜も眠れずに
都内の支店で4年近く働いている女性(31)は、娘(6)を育てながら働くシングルマザーです。時給1650円で月収は20万円ほど。希望する事務職などでの正社員登用をめざし、短期の雇用契約を更新してきました。
派遣から直接雇用になったとき、「私にも正社員の道が開けた」と喜びました。派遣のときより担当業務は幅広くなり、書類チェックなどカードに関わるほとんどの業務を担い、さらに事務作業も手伝ってきました。
6月、丸の内の本社に契約社員が集められ、雇い止めの方針を知らされました。目の前が真っ暗に。「納得できない」「再就職は年齢的に難しい」などと声が上がり、泣き出す人もいました。
その後は、辞めさせられる職場に出勤するのがつらく、再就職も厳しい情勢。この先、どう生活していくのか。夜も眠れなくなりました。6月以降、心療内科に通院しています。
10月、別の支店の知人からのメールで、契約社員が労働組合でたたかっていると知りました。「私たちのために行動を起こしてくれている。自分は何もせず、眺めるだけでいいのか」。そう考え、さっそく組合に連絡し、加入しました。
「私からこの仕事を奪うことは『死ね』と言っているのと同じです。労働者の生活を守ることは、企業の社会的責任の一つです。その責任を追及していきたい」
11月末、都内の金融ユニオン事務所。「支店長や上司は『ずっと働いてもらう』と言っていたのに」「女性のクビだと軽く見られて悔しい」
会合に誘われ、初めて来た契約社員は雇い止めにたいする怒りを語りました。この場で、3人が組合に加入しました。女性たちの多くは、各店舗に一人で勤務しています。つながることが難しいなか、連携をとりあい、全国で10人を超えて組合に加入して立ち上がっています。
実質は正社員
金融ユニオンによると、雇い止めになる契約社員の多くは、派遣のときから3年以上の勤続です。長年、契約を反復更新しており、実質的には雇用期間の定めのない正社員だと指摘しています。
また、現場は昼食時間もまともに取れず、残業続きの忙しさで、人手不足。雇用の継続による職員の増員を求めています。
同社グループの決算は3月期で経常利益5456億円。9月の中間決算の純利益は3567億円と高収益です。組合は、解雇する経営上のさし迫った理由はないと指摘しています。
同社の九条支社(大阪市)に勤め、金融ユニオンで契約社員を支援する男性(62)は、「グローバル展開をめざすメガバンクが、さらなる収益確保のために、契約社員をモノのように使い捨てることは許されない。法的規制を求める大きな運動にしていきたい」と話しています。
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