2010年12月10日(金)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 あの人は、どんな職業についているのだろう。暮らしぶりは? 以前のアメリカでは、その人が属する社会階層の主な目印は服装だった―▼『ニューズウィーク』誌が紹介する、アメリカのある大学教授の話です(日本版12月8日号)。しかし、教授によれば、いまのアメリカは違うそうです。目印が食卓に並ぶ食事に変わった、といいます▼同誌の記事「食卓に広がる新・社会格差」を、興味深く読みました。たとえば、いまアメリカで「地産地消」がはやっています。野菜や果物も穀物や肉も、地元の新鮮な有機食材を使う。値も張ります▼一方、満足に食事をとれない子どもたちがいます。多くの家族が、カロリーは高いが栄養価は低い「ジャンクフード」に頼ります。主に所得の低い事情からです。近く日本でも公開される米映画「フードインク」(食品株式会社)が、そんなアメリカの実像に迫ります▼牛肉の場合、わずか4社が市場の8割を抑え、巨大工場で工業製品としてつくられる。解体などの工程は労働者がついていけないほど速く、不衛生な飼育場で繁殖した病原菌が処理されないままばらまかれる危険がつきまとう。大企業は、下請けの農家や労働者の内部告発を許さず、権力と癒着して実情を隠し続ける▼ジャンクフードの食材も、こうしてつくられます。さて、環太平洋連携協定でアメリカから同様の食料品がもっと日本に入ってきたら…。食べ物の質や安全をめぐる格差の広がりまで、日本に持ち込まれるのでしょうか。





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