2010年12月6日(月)「しんぶん赤旗」
主張
2011年度予算編成
軸足の置き所が間違っている
菅直人首相は3日、予算編成に関する閣僚委員会で、政府予算案の年内編成に向けて詰めの作業に入るよう指示しました。
これを受けて今週中にも、国家戦略室を中心に予算編成の基本方針を策定する予定です。
軍事費の聖域扱い続く
民主党政権は来年度予算の各省庁の概算要求に当たって、社会保障費などを除く経費を一律1割削減する基準を定めました。その上で新たに「特別枠」を設けて「予算配分を省庁を超えて大胆に組み替える」としていました。
「特別枠」を審査した「評価会議」は1日、各省庁の要望をA〜Dの4段階評価した結果を公表しました。それによるとアメリカが維持・増額を求めた在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)は最高の「A」判定で1859億円の要望全額が認められる見通しです。
ところが、小学1・2年生の35人学級や学校施設整備、大学運営費交付金にかかわる「大学の機能強化」、奨学金や授業料免除の拡充など、文化・教育関連の要望は軒並み「B」「C」判定です。
「大胆な組み替え」が聞いてあきれます。意見公募(パブリックコメント)では「思いやり予算」そのものを必要ないとした人が53%に上り、文教関連の予算はいずれも圧倒的多数が必要だと答えています。世界でも異常な「思いやり予算」をアメリカの要求に従ってそのまま続ける一方で、日本の将来にかかわる教育予算を切るのは本末転倒の極みです。
防衛省は「特別枠」で政府が削りそうにない「思いやり予算」などを要求し、本体の予算で多少削減されたとしても軍事予算の総額を維持できるようにしています。「特別枠」は自民党政権以来の軍事費の「聖域扱い」を続ける道具立てとなっています。
暮らしの予算の扱いもぞんざいです。財務省は昨年度にようやく3分の1から2分の1に引き上げた基礎年金の国庫負担割合を、財源確保が難しいとして元の3分の1に戻すと言い出しました。野田佳彦財務相は、再び2分の1に引き上げるために消費税を含む「税制抜本改革」を「不退転の決意で実現する」と語っています。
これは自公政権の国民裏切りの上塗りです。自公政権は基礎年金の財源にすると言って所得税・住民税の定率減税を全廃しました。それだけで3・3兆円もの国民負担増となったのに、ほとんどは大企業向けの研究開発減税の拡充や証券優遇減税の財源に回り、国庫負担割合はわずかしか上がりませんでした。
政府が国庫負担引き上げの財源にしたのは、一時しのぎの特別会計「埋蔵金」です。それが底をついたから消費税増税だというのは重ねての国民への裏切りです。基礎年金の財源は、自公政権の国民への裏切りを正すためにも大企業優遇減税や証券優遇減税を是正して生み出すべきです。
国民本位の予算編成を
税制では民主党のプロジェクトチームが2日に提言を取りまとめ、財界の要求どおりに法人税減税に踏み切るよう政府に求めました。年金財源も足りないと言っているのに、さらに大企業に減税をという政治の感性を疑います。
アメリカと財界に軸足を置く限り、国民本位の予算編成はできません。軸足を国民の暮らしに移すことが必要です。
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